サリナグランデ→ハマ (Argentina)
標高3400mのまま、しばしフラット。
顔が黒くない、やはりこれはビクーニャ。
またブラジル人がめぐんでくれた。
時々現れる小さな集落。
褐色の肌、赤系の服に三つ編み、見るからにアンデス先住民といった感じの女性。
ペルーやボリビアだけではない、アルゼンチンにもいるのか。
手を振ってみたら、笑顔で応えてくれた。
これまた区別が難しい、リャマなのかアルパカなのか。
リャマは、大型で耳が尖っていて毛が短い。
アルパカは、小型で耳が丸っこくて毛が長い。
いずれも家畜。
これはどっちの特徴も備えているように見える。
どっちかといったらリャマかなあ。
再び上昇。
標高3800m。
標高3600mの小さな街。
つぶれてるんじゃないかと疑った宿、ちゃんと営業していて安心。
1000ペソ(428円)。
物価の安いアルゼンチンでも、これは過去最安。
Wi-Fiはあるがほぼ使い物にならない。
アルゼンチンもあとわずかなので、SIMでネット接続。
トイレ、シャワーは共用、ボロいけどちゃんと使える。
ここで年越し。
安いし必要なものはそろっているし、高度順化にはちょうどいい標高だし、2泊。
ここまで来ると白人色はほぼ感じられず、先住民ワールド。
まともに営業してるレストランもなく、小さな売店で買い物するのみ。
皆、人なつっこく話しかけてくれる。
大半の国では、正月というのは日本ほど特別な行事ではない。
1月1日だけ休日で、あとは平常通り。
僕も日本で仕事している時は、嫌でも年末年始というものを意識するし、正月ならではのおいしいものを食べたりもする。
でも旅中は特に何があるわけでもないので、ほぼ平常運転。
再び上昇。
標高4000mまで上がったところで、アルゼンチン人のサイクリストと出会った。
やたらと世話を焼こうとしてくる人で、コカの葉をどっさりくれた。
葉を口に入れて噛む。
高山病によく効く。
16年前の南米走行で高山病になった時も、コカ茶を入れてもらった記憶がある。
ただ噛むだけだと渋すぎるので、味付けの粉も少し混ぜる。
噛んでみると、あら不思議。
息切れしない。
標高4000mにいることを忘れさせるほど、活力がみなぎる。
これ噛んでたらどこまでも登れそうな気さえする。
アンデス地方では古来より嗜好品として親しまれているコカ。
かのコカ・コーラも、初期の一時期だけではあるがコカの成分を入れていたという。
標高4100m、割とソフトな峠を越え。
少し下るとまた広大な砂漠と塩地。
ああ、こういうのも大好物ですよ。
気持ちいいー。
最高。
やっぱ高地は盛り上がるなー。
別の惑星に降り立ったかのような。
向かい風。
午前中から昼すぎまでは穏やかで、夕刻から夜にかけて強風、とうパターンのようだ。
今の僕はコカパワーで疲れ知らず、向かい風だろうがガンガン行ってやるぜ。
涼しくてちょうどいいや、ぐらいの強気。
しかし、どんなにドーパミンにあふれていても、向かい風では進まないという現実は変えられず。
この日行けたらいいなと思っていた街までははるか遠く、早々に切り上げて標高4100mでキャンプ。
だいぶ高地に適応したので夜もちゃんと眠れるようになったのだが、この夜は顔がヒリヒリと傷んで目がさめた。
僕は元々けっこうな乾燥肌。
強烈な紫外線と乾燥はパタゴニアから続いていたが、南下と違って今は北上。
北上するということは、ずっと太陽に向かって走るということ。
高地だとなおさら、空気を漂う物質が低地よりも少ないため、よりダイレクトに紫外線を浴びる。
肌がもうガッサガサで痛くてしょうがない。
何か手はないかと、ためしにサルタで買った虫除けクリームを塗ってみることに。
アルコールスプレーではなくクリームで、アロエ成分が入ってると書いてある。
おそるおそる塗ってみたら、効果あり。
最初はなんか反応してるなという感触があり、その後痛みはおさまって眠れた。
アロエって万能だな。
しばし標高4100mのまま。
チリとの国境が見えてきた。
アルゼンチン最後の街、ハマ。
電波なし。
着いたのは昼頃だったが、ここで1泊したい。
チリに入ったらまた高度が上がるので休んでおきたい、ヒリヒリの肌も休めさせたい、シャワー浴びたい、ネットやりたい、余ったアルゼンチンペソを使い切ってしまいたい、などなど。
期待はしてなかったが、ちゃんとした宿を発見。
Wi-Fiあり、室内にバスルームありで、2500ペソ(1070円)。
今回の旅で最初にアルゼンチンに入国したのは7月下旬。
途中ウルグアイやチリに寄ったりして出入国を繰り返したのでトータルでどれぐらい滞在したのか、計算めんどいのでわからない。
いろいろ愚痴ったり毒を吐いたりもしたけど、僕はこの国けっこう好きだな。
高山、氷河、砂漠、ファーム、大都市、と何でもありの大国。
19~20世紀に農業大国として隆盛し、その後経済失策によって没落の一途をたどり、現在もなお経済は壊滅的で回復の兆しはない。
でも人々はたいして気にしてなさそう。
いや全然気にしないのもどうかと思うけど、今に始まったことじゃないし、くよくよせずストレートに生きるアルゼンチン人の気質には見習うべきところがある。
ワールドカップで優勝した時もキチガイのように喜んでたし、自分にはないものを持っている人たちからダイレクトに感じられるものがあった。
明日、アルゼンチンとおさらばして、またまたチリへ。
Jama, Argentina
12018km (Total 148712km)