ウランバートル→ボルガン (Mongolia)
ロシアと中国にはさまれた内陸国、モンゴル。
その系統はロシアでもなく中国でもなく、モンゴル語はアルタイ諸語に属し、トルコやカザフなどの遊牧民と源流を同じくする。
形質的には言うまでもなくモンゴロイドで中国人とも似ているが、ソ連の衛星国であったためロシア文化の影響も色濃い。
英語はまったくといっていいほど通じない。
どちらかというと、日本語を話せる人に出会う確率の方が高いかもしれない。
走行中おじさんに声をかけられ、日本人だと言うとカタコトの日本語で話してくれた。
モンゴルと日本の関係は非常に良好。
GSにもCUが。
やはりモンゴルはここ数年でコンビニ化したんだな。
もともとは、モンゴルを南下して中国に入り、15日以内に中国を出国してフェリーで韓国に渡る、というプランが頭にあった。
2018年の第1回モンゴル走行を早々に切り上げて出国したのも、いずれ再訪してモンゴルから韓国まで走り抜けるつもりだったからだ。
日本人は中国滞在15日以内ビザ不要、15日以上滞在するのであれば容易にビザ取得でき、延長もできた。
それはずっと変わらぬもの、と思っていた。
しかし、状況は変わってしまった。
パンデミックで閉ざされて以来、いまだ中国は日本人に対する15日以内ビザ免除を復活させておらず、ビザ取得するのもなんだかすごく面倒なことになっているらしい。
シンガポールとブルネイに対してはとっくにビザ免除を復活させており、さらに今や仏独伊蘭西、マレーシアに対してもビザ免除が実施されている。
以前はヨーロッパ人にとって中国ビザ取得は非常にハードルが高かったそうで、「日本人はいいね、ビザなしで中国に行けるなんて」などと言われたものだが、すっかり逆転してしまった。
ちょっと待てば、と楽観的に様子を見ていたのだが、もう待ってられん。
キャッシュレスの問題もある。
これは実体験したわけではなく人から聞いた話だが、中国の電子決済WeChatは、外国の銀行口座との紐づけができるかどうかは不明、仮にできたとしても最終的に中国のIDナンバーを入力しないと使えないらしい。
クレジットカードが普及しているのは大都市と観光地だけ。
現金はもちろん使えない、仮に使えたとしても店側はお釣りを用意していない。
中国政府もこの問題を認識しており、外国人でも支払えるシステムの導入を検討しているとのこと。
トランジットなら最大144時間滞在可とか、海南省だったらビザなし30日滞在可だとか、よくわからん変則的な新ルールも出してきているが、僕の旅としては使えない。
とまあいろいろあって中国は断念、というか実質閉ざされている状態。
となるとモンゴルのルートも変わってくる。
かねてから、西モンゴルには惹かれるものがあった。
しかし、ロシアと中国に包囲されたこの国は現状だと陸路で出国できないため、どこへ行くにしてもウランバートルに戻って空路で出国しなければならない(国際空港はウランバートルのみ)。
滞在リミットは30日、西モンゴルまで往復となるとムリがある。
片道だけ自走して復路はバスか飛行機、というのも調べてみたが、しかしここはモンゴル、我々の想像するバスや飛行機とは違い、便宜性と信頼性に著しく欠ける。
結論としては、モンゴル北部にあるフブスグル湖まで行き、そしてウランバートルに戻ることにした、往復自走で。
いくつもの縛りがある状況で苦肉の策のようなルートになるが、そうまでしてもモンゴルという国をもう一度走ってみたいという思いがあった。
あちこちに家畜の死体が放置されている。
例の寒波による犠牲だろうか。
ウランバートルから100kmほど西の小さな街。
マップを見ると、1軒の宿。
そこにあるのは看板も何もない建物で、その辺の人に聞いてみたら、たしかにこれは宿のようで、宿の人を呼んでくれた。
やって来た宿の女性は、英語は一言も解さない。
翻訳アプリも役に立たない。
文章ではなくシンプルに単語で入力しても、どうも伝わらない。
彼女のモンゴル語を翻訳にかけても、支離滅裂で意味をなさない文が出てくる。
僕がまったく理解できていないのもおかまいなしに、彼女は大声でワーワー言うばかり、こういうのは実に難儀する。
まあでもなんとか、1泊20000トゥグルグ(902円)。
シャワーなし、水道なし、トイレなし。
トイレなし!?
ちょっと離れたところにある廃墟でして、と言われた。
水は、井戸からペットボトルに汲んで来てくれて、それだけでまかなう。
これだったらキャンプした方がマシだったかな。
Wi-Fiは、聞くまでもなし。
唯一の利点は、電源があったこと。
他にも数人の客がいたようだが、皆外で用を足していたのか。
翌日。
未舗装開始。
路面の質はそれほど悪くなく、ふつうにこげる。
写真だと伝わらないが、アップダウンや峠もまあまあある。
けっこう難易度高い。
一応この道はマップ上では黄色い線で描かれており、道なりに進んでいけば問題ないと思っていた。
しかしふとGPSを確認してみると、いつの間にか違う道にいる。
こんなん絶対間違えるだろ、というような分岐がトラップのように潜んでおり、この日は何度か引き返すハメになった。
これなんかもう道が消失してる。
ボコボコ。
意外にも、無風。
穏やかだ。
あれを登るのか。
やっぱ地球でけぇや。
比較的条件は良かったものの、やはり未舗装は進みが悪い。
目一杯走っても、80kmほど。
風を遮るものが皆無なので、無風で本当に助かる。
主食はまたラーメンになる。
川はめったにないし、あっても家畜の糞尿混じりだろうから、持参した水だけでやりくりする。
夜は氷点下。
日が昇るとグングン気温上がる。
通過する車は1時間に1〜2台。
車が通るたびに砂まみれにされる。
時々、バイクに乗った遊牧民がニコニコしながら近づいてくる。
言葉はまったく通じないが、モンゴル人特有の人懐っこさがある。
街。
僕の出現によってイヌたちが吠えだし、騒然となる。
遊牧民のイヌは放し飼いで追いかけてくるが、街中では鎖でつながれている。
電波あり、ネットつながる。
スーパーあり。
このスーパーのお姉さんが流暢な英語を話せたのでビックリ。
アメリカに住んでたことがあったらしい。
小さなスーパーだが、必要な物は買えた。
しかもカード払いできた。
1度のキャンプで、けっこうな量の水と食料を消費する。
特に川の水が使えないと、この冷涼な気候でも水はみるみるなくなっていく。
最後の街からここまで約120km、最低でもこれぐらいの間隔で1軒のスーパーさえ現れてくれれば、旅は持続できる。
氷が流れる川だが、無類のきれい好きである僕はここで半裸になって水浴びした。
服も洗い、バッグも自転車もきれいにした。
未舗装って汚れるから嫌なのよね。
まあ未舗装はまだまだ続くのでまた汚れるのだけど。
これなんかどっち進めばいいのよ。
この日もキャンプ。
写真にはうつらない美しさがあるから~
こんなん、写真で伝わるかっ!
お好きな道でどうぞ。
時々現れる川。
これぐらい渡るのはワケないが、泥にはまって自転車を汚したくないので慎重に。
舗装路~!
すっ飛ばせ~!
Bulgan, Mongolia
32735km (Total 169429km)