ソウル→聞慶 (South Korea)
どこの国でも大都市から脱出するのに苦労するものなのだが、韓国では首都ソウルでも河川に出れば信号なしノンストップの自転車道、これはすばらしい。
天気がちょっと残念だけど。
韓国縦断自転車道。
2012年完成、ソウルと釜山を結ぶ約600kmの自転車道。
一国をまるまる自転車道で突っ切れるとは、この業績は称えるべし。
自転車道自体は他にも多数あるようだが、玄関口であるソウル(仁川)と釜山を結ぶルートを走ることができればシンプルでいい。
前半はしばらくは漢江(ハンガン)に沿って行く。
ほぼフラット。
東屋、ベンチ、トイレ、などの設備も点在している。
交通地獄フィリピンから飛んでくると、そのギャップが激しすぎる。
カササギたくさん。
カササギは、大陸では広範囲でよく見かけるごく一般的な鳥。
日本にも生息しているらしいけど、日本では見たことないな。
自転車道は必ずしもシンプルに続いていくわけではない。
河川からはずれてちょっとした山道に入ることもある。
でもわかりやすいように標識や案内があるし、消滅することはないので安心。
世界各地にある自転車道、気持ち良く走っていても大半はしばらくするとしれっと消滅してしまう。
トンネルまでちゃんと自転車専用になっている、すごいな。
自転車道沿いには街や店はあまりない。
そしてやはりスーパーはないようで、補給はもっぱらコンビニになる。
ソウルから50kmぐらい走って初めて現れたコンビニ、とその隣に自転車屋も。
物価。
水2L、2000ウォン(224円)。
牛乳1L、3150ウォン(353円)。
コーラ1.5L、3900ウォン(438円)。
あんぱんも売っている、2000ウォン(224円)。
まさかあんぱんにも唐辛子入れてないだろうな、と恐る恐る食べてみたら、大丈夫だった。
雨。
予報を見て降るのはわかっていたが、ソウルのあの宿で延泊するぐらいなら雨天走行した方がマシだと思い、決行。
自転車道沿いの公園に水道あり。
ご丁寧にホースまで付いていて、洗車した。
その後これで水浴びもした。
この公園でキャンプ。
街中の公園だと問題あるが、自転車道沿いの公園は人気もなく、大丈夫そうだ。
特に雨の日、東屋というものがどれだけ重宝することか。
コンビニで米は売っていないので、メシは必然的にラーメンとなる。
ラーメンも見るからに辛そうなものがズラリと並んでいるが、なんとか辛くなさそうなものを見つけ出す、命がけのバクチだ。
あとは魚の缶詰。
ガスもコンビニで売っている。
きれいなトイレ。
ちゃんとトイレットペーパーもある。
クラシックピアノのBGM。
バッハ「ゴールドベルク変奏曲」のアリアが流れてきて、ずっと聴いていたかった。
長い雨。
朝10時ぐらいまで降り続け、やむまで待ってから遅めの出発。
山の方は雪が降ったようだ。
韓国の面積は日本の4分の1ほど。
人口は5151万人。
人口密度は日本より高い。
しかしソウルを抜けるとすぐに希薄地帯、農村ばかり。
どれだけソウルに一極集中しているのか。
超学歴社会、財閥社会。
いろいろやることが極端なようだが、国内の市場が小規模のため、ある特定のものを集中的に強化させて世界の市場で戦う、というのがこの国の生き残り戦略なのだろう。
その極端性がこの国を驚異的なまでに発展させてきたが、一方でその副産物として、世界トップの自殺率や世界最低の出生率という歪みを生み出している。
田舎街でホテル泊。
30000ウォン(3371円)。
韓国の安宿は、どういうわけかBooking.comよりagodaの方に寄っている。
agodaは税手数料抜きの価格で表示され、込みの価格を知るには何度もタップしなければならなかったり、その他いろいろBooking.comより見づらくて使い勝手が悪い。
チェックイン開始時間が異様に遅いところが多い。
18時とか19時とか、いくらなんでも遅すぎる、早い時間に到着してもその時間まで待ってろというのか。
他の条件が良くてもチェックイン開始が遅すぎる宿は弾かざるをえない。
台湾の宿なんかも遅かった記憶がある。
この宿は15時から、世界標準からするとこれでも遅いぐらいだが、韓国では早い方。
スタッフの若い男性は、最初僕に3階の鍵を渡したのだが、「ちょっと待ってて」と1階の部屋の準備を始めた。
翻訳アプリを使ってのやりとりだったが、「荷物が多いようだから1階の部屋の方がいいでしょ」ということだった。
やさしいじゃないか。
だいたいエレベーターのない宿に限って僕はいつも上の方の部屋をあてがわれ、自転車と大荷物を数回にわけて運び上げなければならず、単純な労力だけでなく最も荷物を盗まれやすいスキが生じる時間でもある。
毎度毎度1階の部屋がいいのになー、と思いながらも黙っていた。
こんな気を利かしてくれるのはとても稀だ。
韓国も土禁文化。
室内では必ず靴を脱ぐ。
自転車は室内には持ち込めない。
床暖房。
入室するとすでに床が暖まっている。
床が暖かければ他の暖房器具をゴチャゴチャ置く必要がないし、温度調整もできるようになっている。
セントラルヒーティングもすぐれた暖房システムだが、あれは温度調整ができないので暑い時は窓を全開にするしかない。
アメニティ用品の充実ぶりがすごい。
シャンプー、石鹸、歯ブラシ、ティッシュ、電気ケトル、コーヒー、ミネラルウォーター、冷蔵庫、ドライヤー、そして電気毛布まで。
こんな細々としたサービスは、他国だと日本ぐらいだろう。
全体的な物価は高い韓国だが、これだけそろった宿で3000円台ならコスパ良しだ。
本当に欲しいのは朝食食べ放題なんだけどね。
それから、韓国ではトイレにトイレットペーパーを流せる。
今回の旅では、トイレットペーパーを流せる国はニュージーランドと韓国の2ヶ国だけ。
先進国と後進国の違いに基準があるとすると、
・トイレットペーパーを流せるか流せないか
・車優先(強者優先)か歩行者優先(弱者優先)か
・クラクションを鳴らすか鳴らさないか
・人前でスマホを鳴らすか鳴らさないか
・イヌを敷地内で管理しているか放し飼いか
といったところだろうか。
これらの分布を世界地図に落とし込んだら、きっと先進国・後進国の分布と合致すると思う。
最も簡単に今すぐ直せるのがクラクションだと思うんだけどな。
ただ鳴らさなければいい、それだけ。
それでも鳴らさずにいられない世界の野蛮人ども。
とても日本より人口密度が高いとは思えない。
山道。
自転車だけずいぶん登らせるのね。
標高500mほどの峠。
ここが分水嶺かな。
漢江から離れ、自転車道もやや複雑に進む。
Mungyeong, South Korea
32070km (Total 168764km)