コロンボ (Sri Lanka)

スリランカ民主社会主義共和国。

最大の都市コロンボ。

空港から市街中心まで35km、遠い。
モワッと熱帯の湿気に包まれる。
風景は、インドまたは東南アジア的。
もちろんクラクションは鳴るが、人々からは尖ったものがまったく感じられない。
穏和な国民性であることがすぐにわかる。

スリランカ史上最大の経済危機→破綻、から2年弱。

26年におよぶ内戦が終結したのが2009年、その後は日本や中国の援助を受けて順調な経済成長を見せた。
内戦を終わらせて経済を発展させた大統領は国の英雄となったが、しかし実はとんでもない超絶無能独裁者で、その後国家を破滅へと導いた、という世界の歴史上もう見飽きたってぐらいの黄金のパターン。

まずはパンデミック+ウクライナ戦争のダブルパンチ。
これは全世界にダメージを与えたものだが、特に観光収入への依存度が高いスリランカは壊滅的、しかも冷戦期にソ連との関係を強化した影響で外国人観光客で最も多かったのがロシア人だったという。

それだけではない。
日本からの支援を一方的に打ち切り、中国への依存を深めた。
スリランカの政治は伝統的に血縁関係による一族支配で、大統領は自分の地元に一族の名を冠した国際空港を建設。
しかし立地が悪くて誰も利用せず、世界で最もガラ空きな国際空港と言われた。
他にも中国からの融資で、港やポートシティ埋立地や電波塔など無用の長物を建設したがどれも採算が取れず、中国への借金完済は400年後という試算が出た。

そこで中国は、建設した港を99年間租借すると決定。
中国は始めからこうなることがわかっていたと思われる。
スリランカが借金を返済できないことを知りながらジャブジャブと融資し、限界に達したところで乗っ取って私物化する、見事なまでの「債務の罠」。

中国がスリランカにこだわった理由は、もちろん一帯一路構想。
インドと敵対している中国は、インド沿岸に寄港できない。
スリランカはインド洋における拠点としてはうってつけ、格好の餌食となった。

ちなみに空港はインドが租借した。
海だけでなく空まで中国に制圧されたらさすがに危険だと判断したのだろう。
弱小国ではこういう大国の綱引き合戦がおこなわれる。

さらにトドメの一撃。
大統領による化学肥料輸入の禁止令。
肥料を輸入する際に農家に出していた補助金を浮かせるため、そして有機農業化して環境に良いことやってます風に見せると国際的な機関から融資が受けられる、という目論見。
もちろんこれはとんでもない愚策、あっという間に収穫激減、食料高騰。
主産業でもある茶農家を始め、農業は壊滅状態に。

外貨が底をついたスリランカだが、こうなるともう金を貸してくれる国もない。
苦肉の策として、イランから石油を輸入するのに紅茶で支払うという、物々交換にまで退化した。

物価高騰、食糧不足、燃料不足で国は危機的状況に。
ガソリンを買うのに3~5日も並び、その待機中に熱中症で命を落とした人が11名。

2022年4月、国家破産宣言。

国民の怒りは限界を超え、同年7月、民衆がバリケードを突破して大統領官邸へ侵入、占拠。
すでに大統領は国外逃亡しており、メールで「大統領辞めます」と送信、新人バイトのバックレばりの最期であった。

暴徒と化して大統領官邸を占拠した国民だが、インタビューで、
「我々の目的は大統領の退陣であって破壊行為ではない、この建物を傷つけてはならない、修復するのに我々の税金を使うことになるから」
と言っていたり、ゴミの片付けをする人まで現れた。
冷静で理性的な暴徒、スリランカ人の穏和な国民性が見られた。

債務の罠の象徴、中国製ロータスタワー。
高さ350m、南アジアで最も高い建築物。
2022年9月オープン。
展望台からコロンボを一望するには、自国民500ルピー(237円)、外国人7200ルピー(3418円)。

どの旅行者の情報でも、SIMはDialogというキャリアを薦めており、行ってみた。
しかし、システムダウンにより手続きできないという。
「1時間後には復旧すると思う」と言われ、2時間後に行ってみたが「今日はもうムリっぽいね」とのこと。
翌日は日曜で定休、よってSIMが買えるのは週明けの月曜日。
イチオシのキャリアがこの有様か。
さすが、破綻国家。

Shiranthi Guest House。

個室、3200ルピー(1519円)。
カード払い不可。
エアコンなし、扇風機、冷蔵庫あり。

閑静な住宅地の一軒家。
近年の旅では、労働者の宿という民度崩壊したホステルでストレスを溜め込むことが多く、ドミトリーは避けられるものなら避けてしまいたい心情が作用する。
中心地から遠く立地は良くないが、この料金で個室ならいい。
宿のおばちゃんも、とても人が良い。

がしかし、まさかのWi-Fiなし。
ド田舎や山奥ではない、大都市でWi-Fiなしとは想定しておらず、予約の際にチェックもしていなかった。
宿のおばちゃんは「1泊とは言わずもっと泊まっていきなさい」と言ってくれるが、さすがにWi-Fiなしで連泊はキツイ、しかもまだSIMも買えていない、明日も買えない。
こういうこともあるので、やはり予約は1泊にしておくのが無難、数日まとめて予約しないで正解だった。

フリーWi-Fiが拾えそうな市街中心のショッピングモールまで7km、歩く。

おっ!?

物価高のエリアが続いていたので外食には慎重になっている、しかもジャパニーズレストラン。
でもどうしても惹きつけられてしまい、しばし見つめる。

すると中から人が出てきて、「日本人ですか?」と。
日本語上手なスリランカ人店主で、どうぞどうぞと中に入れられ、こうなったらもう食べるしかない。

おおおおおお!!!!!!

ラーメン、1540ルピー(730円)。
生姜焼き丼、1650ルピー(782円)。
餃子、1320ルピー(625円)。
なんとリーズナブル。

ああ、久々の和。
本当に本当にありがたい。

からあげ丼、1430ルピー(680円)。
海鮮お好み焼き、1760ルピー(837円)。

天ぷらアイス、660ルピー(312円)。

店主は日本語が上手なだけでなく、接客対応も日本人そのもの。
とても礼儀正しく愛想も良い。
日本に4年住んでいたそうだが、たった4年とは思えないほど、ほぼ日本人。

いろいろ話を聞かせてもらったが、やはり経済はまだまだ回復しておらず依然苦境のようだ。
このすぐ前の高層マンションに日本人が何十人も住んでいたこともあってここに店を構えたそうだが、政府が日本の支援を一方的に断ってしまって全員撤退、今は中国人が住んでいるそうだ。

店内でWi-Fi利用可。
スリランカでは早くもネットに苦労しそうな予感がしていたが、さすがはジャパニーズレストラン、こういうところもちゃんとしている。
ここで今後の方針のための情報収集ができた。


翌日、宿移動。

Drop Inn Hostel。

ここも中心地からは遠いが、僕としては自転車と荷物を置ける十分なスペースがあるかどうかが重要。
まだ新しくてきれい。
もちろんWi-Fiありだが、ちょいちょい途切れて不安定。

ドミトリー、US$8。
カード払い不可。

立地は良くないが宿としては文句ない、と思っていたら、まさかのエアコン夜間のみ、扇風機なし。
出た、中米の悪夢の再来か。
なぜ暑さが厳しい地方に限ってこうなのか。
午前中にエアコンは消され、日中はサウナと化し室内にいることは不可能。
夕方にはつけてくれるが、エアコンもパワーなさすぎて、16℃で風量最大にしても生ぬるい、僕だけでなく他の客も暑そうにしている。

復興中の国なので不便を強いられるのは仕方ないが、なぜエアコンON/OFFの二択しかないのか。
窓を開けて扇風機という選択肢がないのが不思議でならない。
節電を迫られているのなら、各ベッドにミニ扇風機を設置するのがベストだ。

問題は、オーナーやスタッフはこの地に生まれてこの気候が当たり前なので、外国人の苦痛など理解されず問題だとすら思われていないことだ。
熱中症で死者でも出たら、考えてくれるのかな。

客層は、ほぼ欧米人。
しかも若い。
ドミトリーは男女ミックスで、イカツイ白人女子たちが半裸でうろつく。
なぜ彼女たちはシャワーを浴びた後しばらくタオル一枚でウロウロするのか。
そんなに自分の立派なガタイを見せつけたいのか。
イスラム世界からやって来るとギャップ感が半端ない。
それから相変わらず、汚い床をよく素足で歩きまわれるな。

それでもやはり、労働者の宿と比べたら旅行者はマナーが良い。
なんたって、大声で電話する者はいないしスマホを鳴らす者もいない。

ほとんどの客は1泊だけして去って行く。
ダラダラせず時間を無駄にしない短期旅行者か。

翌日。

なんと便利なことに、Uberでトゥクトゥクを呼べる。
僕は公共の交通機関が苦手で、通常ならトゥクトゥクも利用せず歩く。
でもUberなら抵抗ない。
宿から市街中心まで6kmほど、トゥクトゥクで400ルピー(190円)前後。

まったくねらって来たわけではないが、偶然にもこの日は独立記念日。

1948年2月4日、イギリスより独立。
当時の国名はセイロン。
スリランカという国名は1972年から。

大規模な式典やらパレードやらは見られなかった。
すでに終わったのか別の場所でやっていたのか、一日コロンボを歩いていたが静かなものだった。

写真を撮っていたら「オレも撮って!」と。

152年もの間イギリスの植民地だったため、英語の通用度は非常に高く、道路は左側通行。

現在は中国ビルとインドビルがひしめく。

きっついヘドロ臭が鼻をつく。

罠とわかっていても中国進出は止まらない。

公用語はシンハラ語とタミル語。
標識は三言語表記。

月曜日。
ようやくSIMを買える。
地元民によると、以前はDialogが良かったが今はMobitelの方がいいぞと言われ、Mobitelに行ってみた。
市街中心地よりも、ちょっとはずれたところにある店舗の方が空いていて待たずにすむ。

60GB、1年有効、2980ルピー(1416円)。
信じられん安さ。
近頃は10GBやそこらで3000~4000円はするのが当たり前だった。
60GBもあれば、今後泊まる宿がWi-Fiなしだったとしても十分足りそうだ。

スリランカはまだまだ現金社会っぽいので、ATMで現金追加。
ところが!

・・・カードがない。

複数のカードを多用しており、この一枚を失ったら終了というわけではなく、誰かに悪用されたとしても全財産を失う事態は回避できるようにはしてあるが。
記憶を遡ると、空港だ。
到着した日、空港で現金を引き出したのはおぼえているが、カードを抜き取った記憶がない。

急遽、タクシーで空港へ。
空港までは遠く、トゥクトゥクは利用できず乗用車タクシーで。
こういう時に限って空港が遠い、車でも長く感じる。

空港に着き、どのATMを使ったかはっきりおぼえていたので、その銀行の窓口に行き、事情を説明。
少し時間がかかると言われ、待機。

20分ぐらい待っただろうか。

・・・あった!!!

ちゃんと届けられていた!!!

いやー、良かった。
もし使用されていたらすぐさま通知が来る、何の通知もないということは届けられている可能性が高いとは思っていた。
届けてくれた方にはお礼を言うこともできないが、ありがとうございました。

僕は物の管理にはうるさい方で、めったに物をなくさない。
特に貴重品類は紛失したことも盗まれたこともなく、こんなことは初めて。
なくすとしたら急いであたふたしている時だが、今回はゆっくりと落ち着いている時だった。
しかも気づいたのが、なくした2日後。
何をボケッとしていたのだろう。
幸運にも被害はなかった、空港までの往復タクシー代が痛い出費となったがこれはボケッとしていた罰ということで。

しかしクレジットカードにしてもデビットカードにしても、タッチ決済でとても便利になったが、拾われたり盗まれたりしたら暗証番号なしで誰でも使えてしまうというリスクは大きいな。
1日の使用限度額を調整するしかないが、限度を少額にしすぎるのも不便だ。

帰りのタクシーで、ドライバーが「これは日本がつくった友好の橋だ」と教えてくれた。

インドと同様スリランカも、インダス文明を築いたドラヴィダ人と、北方から進入して来たアーリア人、という民族構造。
ただし南北の位置関係は逆転しており、南部にシンハラ人(アーリア系、仏教)75%、北部にタミル人(ドラヴィダ系、ヒンドゥー教)15%。

ここではあえて単純化して記述するが実際には非常に複雑で、同じタミルでも、紀元前から住んでいたスリランカタミル(ヒンドゥー教)と、19世紀以降にイギリスによって労働力として連れてこられたインドタミル(イスラム教)に分かれていたり、アラブの交易商人によるイスラム教徒や、大航海時代から近代にかけてやって来たヨーロッパ系によるキリスト教徒も、それぞれ10%以下ではあるが存在している。

数千年にわたって対立してきたシンハラとタミル。
植民地時代にイギリスのお家芸である分割統治によってよりいっそう対立関係が露骨にされて憎しみ合い、独立後の政情も不安定にし、その後長期内戦へとなだれ込むことになる。

おじさんから声をかけられた。
「暑いね、どこから来た? 日本? コンニチハ、アリガト、今この先の寺で祭りをやってるからついて来なよ」
ぼったくり詐欺かな、今時こんなのに引っかかる旅行者いるのかな。

数時間後。
また別のおじさんから、ほぼ一字一句違わぬセリフで話しかけられた。
さっきのヤツとグルか、同じ手口でやるにしてもセリフは変えた方がいいんじゃないかな。

こういうのって、若い女がやった方が断然釣れると思うけどな。
仮に詐欺師じゃなくて善人だったとしてもだ、この暑い中おじさんと一緒に歩いて寺に行ったところで楽しいことなんて何もないじゃん。

マーケットは活気があって楽しい。





自転車屋は、ないわけじゃないが品ぞろえはまったく期待できない。
スリランカで深刻なパーツトラブルが発生したとしても、交換はムリだろうな。

コーラ1.5L、380ルピー(180円)。
500ml、150ルピー(71円)。
ドリンクが100円以下で買える、素敵。

この物価なら、長旅の者としてもゆっくり居れる。
しばらく物価高の国が続いていたので、ホッとする。

マクドナルドはバカ高い。
ビッグマックのセットが2710ルピー(1287円)。
完全に高級レストランの価格、まさかのジャパニーズレストランの一品より高い。


夕方、カフェで軽食。
マカロニと数種の具材を炒めたもの。
一口食べて、店のお姉さんに「どう?」と聞かれ、「Very Good!」

しかし、二口三口食べていくうちに、、、辛い。
食べれば食べるほど、辛味が激化。
喉が焼けるように痛み、汗が滝のように流れ落ちる。
こいつはやべえ。
それでも、出されたものは完食するという信条のもと、無理矢理胃袋に流し込んだ。

すると店のお姉さんが、「ちょっとあなた大丈夫? 水いる?」
こうなるとポーカーフェイスもできやしない、泣きっ面で「・・・お願いします」
気づくと他の女性店員たちも、こっちを見てクスクスと笑っている。
おそるべしスリランカ、この国で食べていけるのだろうか。

英語の通用度が高いので、事前に「ノースパイシープリーズ」と念を押せばなんとかしてくれるだろうか。
僕の場合、「あまり辛くしないで」ではなく「辛味成分ゼロ」にしてもらわないと困るんだけど、これも理解されにくいんだろうな。


マーケットでバッグを買った。
4000ルピー(1886円)。

出発前にドンキホーテで買ったバッグ、驚異的な耐久性を見せてくれたが、もう限界。
買った当初は真っ黒だったんだけど、色褪せたどころじゃないな。
よくがんばってくれた。

灼熱のサウナ宿。
あー暑い。
なんで金払ってこんな苦しめられないかんのか。
空気がまったく動かない、せめて扇風機を・・・


Colombo, Sri Lanka



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