セロカスティージョ→プンタアレナス (Chile)
オイギンスでいったん途切れたチリの道。
フィヨルドの複雑すぎる地形と峻険な山々によって阻まれているためだが、陸地自体は続いている。
セロカスティージョからまた道が復活し、さらに南下することができる。
トレスデルパイネ国立公園。
パタゴニアの山や湖や氷河でトレッキングを楽しむため、ここまで来た。
その入口となる街、といっても国立公園から60kmも離れているが、セロカスティージョは小さな街でキャンプ場もないため、街から離れた川まで行き、橋の下でキャンプ。
橋の下でも電波があり、ネットができる。
チリのSIMがまだ有効で、エルカラファテにいる時にチャージして、入国したらいつでも使えるようにしておいた。
僕はこの国立公園について何も調べずにここまで来てしまった。
せっかくネットもつながることだし、テントの中で寝そべりながらリサーチしてみることにした。
国立公園の入場料は、事前にオンライン申請で支払う。
チリ人(3日間有効) 7300ペソ(1117円)
外国人(3日間有効) US$35(4720円)
宿泊も要予約。
キャンプ場は豊富にあるが場所によって料金は異なり、食事付きだとかプレミアムだとかのオプションも多々ある。
たとえばゲート近くのキャンプ場で最もベーシックなものが、
チリ人 19500ペソ(2984円)
外国人 US$37(4990円)
トレッキングに丸一日を費やすため、最低でも2泊する必要がある。
天候次第では延泊する可能性もあり。
合計
入場料(4720円)+キャンプ代(4990円×2)=14700円
・・・アホくさ。
却下。
1日トレッキングしてキャンプ場で2泊するだけでこの料金、アホくさすぎる。
円安の影響が大きいにしても、オーバープライスにも程がある。
美しいものを見たい思いはあるが、僕の旅はこういうんじゃない。
どうせチリのことだから、法外な料金をふんだくっておきながらサービスは後進的なレベルでしか提供できないだろう。
しかも自国民と外国人を露骨に差別して外国人はドル払い、外貨獲得欲を隠そうともしない。
アフリカのサファリやヨルダンのペトラ遺跡なんかも、「どんだけ値上げしても外国人は金払って見に来るぞ」と面白がるかのように、サービスは劣悪なままで料金だけを吊り上げ、現地の物価からはかけ離れた特権階級エリアとなっている。
自然や文化の価値を置き去りにして、人間の強欲さをまざまざと見せつけられる現状がある。
アラスカのデナリ国立公園なんて無料だったぞ。
ちょうどこの日から、今までの快晴がウソのように崩れ、しばらく曇天雨天が続くという予報。
この天気じゃ山は見えまい、ちょうど良かった。
たまたま橋の下でネットがつながっていなかったら、僕は何も知らずに60km走って国立公園まで行き、門前払いされていただろう。
そんなわけであっさり見限り、パイネの山々を拝むことなく南下。
60kmほど南下すると、港町プエルトナタレスが現れる。
人口2万人弱。
陸路はいったん途絶えて陸の孤島となっているにもかかわらず、オイギンスなんかとは比べものにならないぐらい大きな街。
海上交通が網羅されてるとはいえ、辺境の地にこんな立派な街が成立しているのは驚きだ。
大型スーパーあり。
アウトドアショップあり。
多くの旅行者がトレスデルパイネへの拠点とするためツーリスティックでもある。
ホステル兼キャンプ場でキャンプ。
8000ペソ(1224円)。
電源がとれるのはキッチン内のみ。
キッチンは非常に狭く定員は1〜2名、他の客が調理や食事する時は遠慮して退室しなければならない。
コロナ禍の東京でのシェアハウス生活を思い出した。
アルゼンチンの無人地帯とは違ってチリでは牧畜業が営まれ、ちょっとした集落が点在してたりする。
南下するほど風は猛威を増す。
バス停も完全防風仕様。
この日は、今回の旅で最恐の風となった。
進路は南東、思いっ切り追い風。
座ってるだけで40km/hも出る。
追い風も度を越すとハンドルコントロールに神経を擦り減らす。
道はそう単純ではなく、時々進路が西寄りになったりする。
そうなるともう恐ろしい横風で張り倒されそうになる。
二輪車は横風にもめっぽう弱い。
とても乗っていられず押して歩こうとするも、自転車が倒れないよう支えるだけで精一杯。
自分の右側から風が来るので車道側に押され、非常に危険。
これはもうやってられん、と道路下の排水路に逃げ込んでキャンプしようとした。
しかしあいにく、排水路も風が抜ける方向のため暴風地帯に変わりない。
ためしにテントを張ってみた。
自転車を倒して、テントにつないで重りにしてみたが、自転車もジリジリと動いてゆく。
テントは風でしなってペチャンコ。
ダメだこりゃ、テントが壊れる。
というか、壊れた。
ポールの一部がフライシートを突き破ってしまった。
まっとうなキャンプは断念して、バス停に避難。
大自然を求めて旅をしても、困った時には人工物にすがりつくことになる。
今日はここで寝るしかない。
足がはみ出ちゃってるけど、まあ問題ない。
偏西風は恒常風。
季節による風向きの変化はなく、通年西風あるいは北西風。
バス停もちゃんと風を防ぐ向きにつくられている。
夜明け前、ふと目を覚まして外を見ると、南十字星が輝いていた。
朝は風が弱まる。
進路が西寄りになるエリアは朝のうちに抜けて、再び追い風をいただく。
尻尾はキツネで顔はイヌ?
プンタアレナスの街が近づくにつれて交通量が増す。
風に煽られた勢いで車と接触しないよう、神経を尖らせる。
マゼラン海峡。
プンタアレナスまであと20kmほどというところでまた進路が西寄りになり苦戦したが、なんとか雨が降り出す直前に到着。
Porvenir, Chile
11001km (Total 147695km)