サンセバスチャン→ウシュアイア (Argentina)
4回目のアルゼンチン入国をすませ、サンセバスチャンに着いたのは昼すぎ。
猛烈な追い風に乗って次の街まで行ってもよかったが、急ぐ理由もないのでここで1泊することに。
サンセバスチャンは小さな街だが宿がある。
あいにくシングルルームはなくベッドが3つもある大きな部屋で、バスルーム付き、朝食付きで、4000ペソ(2000円)。
アルゼンチンとチリを何度も行き来してもう慣れたが、どっちが良いかと言ったら、やはり物価の安いアルゼンチンの方が安心感がある。
現金払いで手持ちの残金を常に気にしなければならない(いざとなったらカード払いもできるのだけど額が倍になる)、ローカルな街ではシエスタで不便を強いられる、などデメリットはある。
それでも、やはり物価が安いというのは旅人に大いなる安心感をもたらしてくれる。
チリだと、2000円じゃドミトリーでもギリ泊まれない。
キャンプも好きだしドミトリーもいいけど、個室で何も気にせず悠々とベッドに寝転がると、よく休まる。
国民性や文化は、細かいことを言えばいろいろ違いがあるが、旅をする上ではアルゼンチンもチリも大差ない。
鏡を見ると、肌がボロボロ。
長いこと猛烈な風に吹かれ続けて乾燥しきったせいだろう。
紫外線も強い。
走行中は帽子とサングラスで保護しているが、鼻から頬、そして耳にかけてドス黒く日焼けし、唇はひび割れている。
大西洋。
最後に大西洋を見たのはウルグアイからブエノスアイレスにかけて。
しばらくチリの太平洋側を走り続け、再び南米の東海岸へ。
ここまで南下すると、逆に人口密度がやや高まる。
次の街まで大無人地帯というわけではなく、ファームや石油採掘や工場などが点在している。
交通量も多い。
舗装路だし、フラットだし、座ってるだけで追い風が次の街まで運んでくれる。
※銅像です。
リオグランデ。
シンプルなシングルルーム、2500ペソ(1250円)。
バスルーム共用、朝食なし。
独り者にはベッド2つも3つもいらないし、これぐらい質素でいい。
朝食は欲しいけど。
もうだいぶ前からだけど、建物内では常時暖房がついている。
今は夏真っ盛りだが、東京の12月上旬と体感的に同じぐらいかな。
とにかく風の影響が強すぎるので気温で単純比較はできないが。
夏至まであと2週間ほど。
現在、日の出は4:50、日没は22:00。
いつもなら宿でこっそり食事するのだが、ここは部屋の周囲に常に人の気配があり、音も匂いもダダ漏れっぽいので断念。
いや外食したいと思ってたのでちょうどいい、外を探索。
まあ外食といってもこんなもん。
ハンバーガー+コーラで1780ペソ(890円)。
マズイわけじゃないんだけどね。
旅情を掻き立てられるような食文化を期待してはいけない。
ステーキ+コーラで2150ペソ(1075円)。
ソースで味付けという発想はないようで、無味。
塩をかけまくらないと味がしない。
パンにはバターもつかず、喉が渇く。
日本人の味覚は、豊富な調味料やダシや酒みりんなどによる深遠なる味に浸かり、さらに和洋中と毎日手を変え品を変え、さらに地域ごとの御当地メニューなど、時間軸においても空間軸においても飽くことなき無限のバリエーションの中で食を楽しみ、舌が肥えすぎてしまっている。
考えようによっては、素材をただ加熱するだけで何の芸もないこっちの食文化の方が自然で健全なのかもしれない。
これだとプロの料理人としてのスキルは必要ない、僕でもスーパーで買ってきた食材で簡単に同じものがつくれる、いやもっとうまくつくれる。
そして野菜が足りんな。
旧宗主国であるスペインも地中海性気候による痩せた土地、ここパタゴニアもとてもじゃないが農業には適さない過酷な土地。
豊かな食文化を求めるのは酷というもの。
意外にシエスタなしで営業している店があり、夕方でも食べたい時に食べられる。
これだけでも大いに助かる。
マクドナルドやバーガーキングはないが、大きな街にはMOSTAZAというアルゼンチン独自のファーストフードチェーンがある。
ブエノスアイレスやメンドーサで入ったことがある。
こういったチェーン店はシエスタなしで営業しているので食べたい時に食べられるという利点があるのだが、いつも激混み。
混んでてもレジが素早く稼働してくれればまだいいのだけど、何やらせてもトロいんだよなー。
スーパーも、レジがはるか遠く見えないほど長蛇の列。
店員はスマホをいじりったり鼻をほじったりしながら急ぐ素振りも見せず、のんびりとしたもの。
アルゼンチンに限らず、ここはラテンアメリカさ。
まあ悪くない街だし、宿もちょうど良かった。
ただ家族経営の宿で、部屋の周囲で家族の話し声がそのまま聞こえてくる。
それだけならいいのだが、深夜日付が変わってから食事を始め、日付が変わっても子供が騒ぐ。
個室に泊まっているのにイヤホンで耳をふさがないと眠れなかった。
やっぱシエスタ文化にはついていけないな。
夜はおとなしく寝とけや。
宗谷岬に近づくにつれてサイクリストやライダーが増えるように、ウシュアイアに近づくほど二輪の旅人たちと頻繁にすれ違う。
トルウィンという街からウシュアイアまでの約100kmは、進路が西になる。
ちょっとした進路の変化にも敏感になってしまうパタゴニア走行だが、この日は運良く無風。
地形が山がちになり、木が多いおかげもあり、風の影響はほぼなし。
交通量増大。
ひっきりなしに車が行き交い、大型トラックも多い。
クラクション鳴らしてくるバカドライバー死ね。
もうここはパタゴニアではない。
ただのアルゼンチンだ。
とうとうウシュアイア。
11474km (Total 148168km)