ラパス 3 (Bolivia)
首都ラパス。
独立当初から首都であったスクレが現在も憲法上歴史的首都とされており、その後首都機能が遷都されたラパスが事実上の首都となっている。
こういうややこしい国は他にもいくつかあるし、最大の都市と首都が一致しない国の例もいくらでもある。
なにもこんな崖っぷちに無理して住まなくてもねえ。
世界一標高が高い首都。
都市全体が斜面に形成されており、だいたい標高3500~4000m。
中心地がどこなのか明確でないが、だいたい標高3600m。
ラパス国際空港は標高4000mに位置し、世界一標高が高い国際空港となっている。
一般に、金持ちは見晴らしの良い高台に住みたがるものだが、ラパスは逆。
酸素は低地へと下降し、排気ガスは高地へと上昇するものなので。
高所得者は低地に林立するタワマンみたいなところに住み、低所得者は崖っぷちにへばりついている。
人口は80万人、もっと多いように見える。
ここもマスク率高いなあ。
「La Paz」=「平和」。
英語の「peace」と同じ語源なのかな。
毎日雨天曇天。
束の間の晴天時に街の風景を撮っておいた。
1月が最も降雨量が多く、これから少しずつ乾季へと移行していく。
ラパスも2007年に来ており、二度目の訪問。
当時とは比べ物にならないぐらい物価が上がっており、安い国だとは感じない。
自国生産力が乏しく多くの商品を輸入に依存すると物価が上がる、ましてこんな不便なロケーションの内陸国だと輸送コストも跳ね上がる。
しかしそれを考慮しても、高い。
言うまでもなく、コロナ&ウクライナ&円安、のトリプルパンチの影響だが、印象としては特にコロナショックが強烈に効いているような気がする。
見逃さないよ同業者。
慣れてないのか、恐る恐るやってるのが伝わってくる。
ケーキ屋さんもたくさんある。
見てるだけでウキウキしてしまうね。
こんな大都市だが、スーパーマーケットはごく少数。
こういった国ではスーパーというのは庶民の場ではなく、上流階級の特権的な場。
商品のラインナップも輸入物が多く、割高。
入店するにはマスク必着、ガードマンが手にアルコールスプレーを吹き付けてくる。
くだらねえ、いつまでこんなことやってんだ。
そしてリュックは預けなければならない。
未発展な国に共通する謎ルールで、僕はこれが納得いかなくて世界各地でガードマンとトラブルを起こしてきた。
現代のラテンアメリカにおいてはこれも時代錯誤、ボリビア以外の国ではほぼ廃れている。
鍵付きのロッカーがあれば従ってあげてもいい。
いつでもどこでも渋滞だが、特に夕方はひどい。
膠着してますね。
クラクション鳴らしたって渋滞は解消されないよ。
逆に、クラクションで煽ることによって車間が詰められ、むしろ渋滞は悪化する。
まずは車間を空けて、譲り合うところから始めてみよう。
17年前に中南米を旅した時は、全域がキチガイクラクション地獄だった。
どいつもこいつも阿呆のように無意味に闇雲に鳴らし続けるその様はまさに狂気の沙汰。
音環境はクラクションノイズにまみれ、汚染されきっていた。
「経済レベルとノイズは反比例する」という万国共通の法則。
国の発展度や成熟度をはかる上で、クラクションは最も如実なバロメーター。
しかし今回の中南米で旅した国々は、クラクションは鳴るには鳴るが、キチガイゾーンからは脱却してグレーゾーンへと昇格。
南米最奥部ともいえるここボリビアでも、グレーと評価していい。
物理的強者ほど偉いのが当たり前という車優先社会も、少しずつ歩行者自転車を優先する姿勢が確立されてきている。
ささやかながらも着実に、理性と静寂を得ている。
当時はどこもかしこもゴミだらけ、川や湖はドブばかりの悪臭、さらにドス黒い排気ガスを食らって寿命を縮められた。
今も劣悪は劣悪だが、格段に改善されている。
さらに驚嘆すべきことに、「チノ」(中国人)と呼ばれることもほとんどなくなった。
当時は、歩いているだけで人の顔を見るたびに「チノ!」と吐き捨てるように言われたものだ、中南米全域でだ。
日本も似たような道を歩んできたのではないか。
過去は美化されるもので、こういった汚い記憶はなかったことのように消されていくのかもしれない。
でも旅をしていると、人類がたどってきた歴史的記憶が生々しく想起される。
人も国も、変われるものだ。
世界は確実に良くなっている。
数年前に「FACTFULNESS」を読んだ時、目からウロコが落ちるかのように「世界の見方」を変えられた。
現在の中国がどうなっているか、心から興味がある。
La Paz, Bolivia