ヤンブ→メディナ (Saudi Arabia)
青い紅海。
色で方角を表現した時代があったそうで、北にある海は黒海と呼ばれ、南にあるこの海は紅海と呼ばれるようになった。
他にも諸説あるようだが、何にしても赤い海なんて違和感しかないから改名した方がいいんじゃないかな。
今月19日、イエメンのフーシが紅海上の日本郵船を拿捕した。
船の所有者はイギリス企業だが、そのトップはイスラエル人の海運王ラミ・ウンガー。
イスラエルに向けて巡航ミサイルを撃っても米軍に迎撃されるので、シージャックに切り替えたか。
紅海のチョークポイントといえばスエズ運河だが、その逆サイドのバブ・エル・マンデブ海峡もチョークポイント。
もともと海賊が出没する上に、イエメンに面しているということで特に現在海運の脅威となっている。
ヤンブ。
いいかげんここらで1泊したい。
最安宿は、142.36リヤル(5667円)。
今回の旅では最高額かな。
予約サイト上の宿はだいたい万単位なので、5000円台だと安く見えてしまう。
パッと見は立派で必要なものはそろっているが、細部を見るといろいろボロい。
日々モスクで行水と洗濯はしていたが、ひどいヒゲヅラになっていた。
イスラム文化としては男はヒゲを生やすべきものだが、僕はどうしても自分のヒゲヅラが好きになれなくて、きれいに剃ってサッパリした。
充電も、ハブダイナモでは日々のスマホ、カメラ、ヘッドライト等すべての電子機器の充電をまかないきれず、たまにフルチャージしておかないと間に合わない。
すぐ近くにある大型スーパー。
コカコーラ2.25L、9リヤル(358円)。
牛乳1L、6リヤル(238円)。
鶏モモ500g、8.95リヤル(356円)。
紅海走行を終え、内陸へ。
テント生活をするイエメン人に招かれた。
サウジアラビアの隣国で同じアラブ文化圏だが、人はまったく違う感触。
英語はほぼ通じないので詳しいことは聞き出せないが、身振り手振りでなんとかやりとりする。
ランチをごちそうに。
パサパサの米を手ですくって食べるのはちょっと難易度高い。
もっと食えもっと飲め、とどんどん差し出してくる風習は共通。
ここで養蜂をしている。
ハチミツいただいた。
サウジアラビア人ドライバーからは、小さな菓子をいただくことが多い。
内陸では農業がおこなわれていて、人の気配がなかなか途切れない。
寝場所を見つけられないまま、日没が迫る。
もうここでいいか、と妥協してキャンプ地としようとしたのだが、見られていたようだ。
山中にポツンと佇む一軒家から車がやって来た。
事情を説明したら、「ここでキャンプはダメだ、ウチへ来い」と家へ連れて行かれた。
たどり着くと、10人近くのサウジアラビア人が「ウェルカム!」と言って歓迎してくれた。
なんでこんな不審者を躊躇なくウェルカムできるのか。
皆さん英語はあいさつレベルでうまく話せないが、ニコニコと笑って丁重にもてなしてくれた。
庭に植えてあるミントを紅茶に入れて、ミントティー。
ここも、全員男。
いったい女性はどこに?
家庭内においても男女は隔離されているようで、どこか別棟に女性がいるはずだとは思うのだが、僕の前に姿を現すことはなかった。
徹底してるな。
裏山でイヌたちが騒ぎ出したので、様子を見る。
ネコが侵入したようだ。
鶏を襲うので、イヌたちはネコを排除する役割を担っている。
もしこっそりキャンプしていたら、僕もネコと同じ目にあっていたかもしれない。
ディナータイム。
肉と米。
よく煮込んだ牛肉で、やわらかくておいしい。
皆さん手で食べているが、僕にはスプーンを付けてくれた。
翌朝。
サウジアラビアのGDPは世界19位。
国家の歳入の大半が石油。
今まで旅したオイルマネー国家、たとえばイラン、トルクメニスタン、アゼルバイジャン、ブルネイなどにも共通するが、資源の恩恵で食うに困ることがない代償として、産業が栄えない。
金はあってもなにかと不便だったり、娯楽や刺激がなくていかにも退屈そうだったり、日本とは真逆だ。
日々の楽しみとして、家族親戚友人が集まって団欒したりする。
サウジアラビアも少子化傾向にあるものの、出生率は2.3と世界標準。
外国人労働者を取り入れているおかげで平均年齢も若い。
他国の社会変化にムリして合わせなくても、長い年月をかけて培われた自国文化を守り続けるというのも、生き残り戦略として必ずしも間違ってはいないのかもしれない。
にしても、サウジアラビア人ってどうやって結婚相手を見つけるのかな。
誰からも見られない橋の下、落ち着く。
Al Madinah, Saudi Arabia