ブランカ湖→チャルビリ湖 (Bolivia)
残念ながら、アウストラル街道と同様ここも、知られざる秘境というわけではない。
サンペドロデアタカマとウユニを結ぶアドベンチャラスなルートとして欧米人旅行者に人気。
ジープツアーだかなんだかで、無数の四駆がかけめぐる。
そう、また車が来るたびに猛烈な砂埃を食らう日々となる。
風景を撮るにも、車の気配を感じるとカメラをバッグにしまってしばし待機。
車が通りすぎた後も、砂埃がおさまるまで待機。
遠くから車の音が聞こえてくるだけで、「チッ」と舌打ちしてしまう日々。
砂道。
未舗装路における最大の障壁は、やはり砂。
ガタガタでもゴツゴツでも、スナスナに比べればかわいいもの。
ゆっくりでも進めればまだいい、砂にはまると自転車はただ沈みゆく鉄の塊と化す。
スナスナの正規ルートで意固地になっててもしょうがない、他の轍に乗り換えた方が走りやすかったりする。
轍がスナスナ化したらまた正規ルートに戻ったりなど、ルート選びで四苦八苦する。
時々通りすがるジープが、野生動物でも発見したかのようにものめずらしげに僕を見つめる。
また何でしょうね、この色彩。
長い登り。
スナスナの登りは気が遠くなるほど進まん。
空気も薄いし。
標高4700mの峠。
下る。
以前ボリビアを旅した2007年当時はボリビア共和国であったが、現在はボリビア多民族国と国名が変わっている。
国土は日本の3.3倍。
高地のイメージが強いが、アンデスの高地は国土の3割。
6割がブラジルやパラグアイと接するアマゾンのジャングル。
人口は1167万人。
全域がスペイン&ポルトガルの植民地であった中南米。
19~20世紀にかけて、本国に対する反発から独立国が成立していった。
南米南部ではサン・マルティンやベルナルド・オイギンスが独立の主導者となってアルゼンチンやチリを独立させ、北部ではシモン・ボリバルがコロンビアなどを独立させ、ボリビアも彼の名にちなんだ国名となった。
当初、ボリビアは太平洋沿岸部を領有していたが、その地の豊富な資源をめぐってチリと緊張が高まる。
沿岸部のチリ人入植者に対してボリビアが重税をかけたことをきっかけに、ボリビアvsチリで戦争に。
敗戦したボリビアは海を失い、内陸国となった。
20世紀前半には、大西洋へのアクセスを獲得せんとパラグアイ川の支配権をめぐり、ボリビアvsパラグアイの内陸国同士で戦争に。
またしても敗れ、ボリビアの国土はさらに縮小した。
海を失ったボリビア。
地政学的に内陸国は不利きわまりなく、経済発展もままならない。
現在もチチカカ湖畔などに海軍を保持し、海奪還への意思表示をしていることからも、根深い反チリ感情が見てとれる。
あまりに進まないのでどうなることかと思ったが、その後は調子良く下り。
チャルビリ湖に到着。
街はないが、主だった湖には売店や宿があるようだ。
久々に見た、ODAのロゴ。
売店は、駄菓子とドリンクが売られている。
食料はしばらくもつのでいいが、水はすぐに足りなくなる。
ファンタ4Lと水2L、計48ボリビアーノ(916円)。
南米随一の物価安のボリビアだが、さすがにこの僻地では割高。
4軒の宿があり、一応あたってみたがツアー客の予約でいっぱいのようだ。
空室もあったが、宿泊の三大要素である「シャワー・電源・Wi-Fi」がいずれもないという。
1泊50ボリビアーノ(954円)、高いとは思わなかったが、ただ寝るだけのために金を払う理由はないのでやめた。
この湖は、温泉が湧いている。
売店で6ボリビアーノ(114円)でチケットを買い、入浴。
アウストラル街道の時以上に砂まみれになった体と服。
ちょうどうまいことこの時、他に入浴客がおらず独占、さりげなく髪や身体をゴシゴシこすって流してサッパリ。
てか温泉湧いてるんだったら、宿まで引っ張ってくればいいのにね。
塩っ気もなかったので、生活用水としても使えるんじゃないかな。
宿の建物周辺でキャンプするのは一向にかまわないというので、風を防げるポイントにテントを張らせてもらった。
トイレも使っていいという。
トイレは一応流せるが、洗面の蛇口からは水は出ない。
日没後、ジェネレーターの音が轟く。
宿ではこれで発電し、夜間の数時間だけ電気が使える。
3ベッドの部屋が多いのか、「キャンプなんかしないで、ベッド余ってるから一緒に部屋で泊まろうよ」と声をかけてきた2人組の旅行者が1組、2組も。
なんてやさしい人たち。
気持ちは本当にありがたいが、丁重にお断りした。
正直、テントの方が自由がきくし気を遣わずにすむ。
皆、「こんな寒い中でキャンプしなくても」と言っていたが、僕としてはこれぐらいがキャンプにちょうどいい頃合い。
入国時から感じていたが、人が明らかに変わった。
今回の旅で通過したブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、アルゼンチン、チリ、はいずれもヨーロッパ系が圧倒的に支配的だった。
ボリビアは、85%が先住民。
身体的特徴はモンゴロイド、褐色の肌でいかにも先住民。
人に話しかけることに躊躇せず、気軽にからんでくる。
僕に興味を持ってくれて、親切に気遣ってくれて、わかりやすいスペイン語で、僕としてもとても接しやすい。
人当たり、感触といったものが、コーカソイドとモンゴロイドとでは明確に違う。
Uyuni, Bolivia