サントトメ→グアレグアイチュ (Argentina)
フラット!
アルゼンチンの国土面積は世界8位(日本の7.3倍)。
カザフスタンより大きく、インドよりは小さい。
南米でトップ10入りしているのはブラジルとアルゼンチンの2ヶ国。
人口は4500万人。
50cmでもいいから、路肩を舗装してくれ。
片側一車線。
こんな広大な土地でギリギリ設定の道路しかつくれず、猛スピードのトラックがスレスレで行き交う。
やっぱ中国におねだりしてまともな道路をつくってもらうしかないよ。
近すぎるトラックの風圧でよろめき、一日中車の脅威にさらされ、気を張りっぱなし。
ドライバーにとっては、自転車とすれ違うなんてことは1日に1回、いや数日に1回あるかないかだろうから、たとえば対向車と僕の三者が重なる時なんかは、ちょっと減速してタイミングをずらしてうまくかわすとかしてくれてもいいのに。
道路が自分のモノであると思いたい稚拙な縄張り意識がドライバーを狂わせるのか。
でも8割方のドライバーは紳士的、アルゼンチンも進化してはいる。
地獄の幹線道路から離脱して、ローカルロードへ。
未舗装の道を30kmほど。
この日の目的地まではこの道がショートカットになる。
村では、イヌが吠え立てて追いかけてくる。
中南米といえば、ほぼ全域でイヌに追いかけられまくった記憶が強く残っている。
今回の旅では、あまりない。
吠えられることはあっても、敷地内で飼われているので追われることは少ない。
イヌの管理、これも自転車旅で感じる世界の進歩だ。
発展の遅れた村では、まだふつうに追いかけられる。
いい道じゃないか。
幹線道路からはかなり離れて、車のノイズも聞こえてこない。
やっぱ自転車と車は棲み分けするべきだよね。
街の中に入っても、しばらくは未舗装。
街は寂れている。
野良犬が多く、信じられないほど古くてボロい車が走っている。
今までの「発展著しい中南米」の勢いがここアルゼンチンで一気に急降下して、何十年も遅れをとっている停滞感。
旧ソ連共産圏とも通ずる空気。
マップにはホテルが多数表示されている。
比較的まともそうな宿をあたってみても、存在しなかったり、つぶれていたり、開いててもレセプションに人がいなかったり。
ダメだこいつら、やる気がねえ。
この街で一番立派なホテル、さすがに高いかなと思いながらもとりあえず入ってみた。
2500ペソ(1072円)。
コンセントに電気が通っておらず、バスルームのコンセントから延長コードで引っ張って使った。
シャワーのお湯が出なかったので言いに行ったら、30分待ってくれと言われ、30分後に限りなく水に近いぬるま湯がちょろちょろと出た。
「Hotel Imperial」というたいそうな名に一瞬でも怖気づいた自分が可笑しく思えてきた。
パソコン作業中にミシミシと音がするなと思ったら、家具の扉が突然崩落した。
大丈夫かな、この国?
安い国というのは、ただ安いだけではすまない。
こういう不具合があるゆえに国全体が格安となっている。
でもかつて、アフリカやアジアなど物価の安い国で、金額にさほど縛られずのびのびと旅してたあの頃に戻れたかのよう。
たまたま日本に生まれたというだけでこれだけの体験ができた、本当に贅沢なことだ。
川の向こうにずいぶんと立派な街があるなと思ったら、あれはブラジルの街。
自転車レーンが整備されていたブラジルの街が遠い昔のように感じる。
ここから高速走行。
ようやくまともな道で走れるのかと思いきや、、、
ウソだろ、、、
高速道路で路肩未舗装だなんて前代未聞。
片側二車線なのでだいぶ余裕はできたが、それでも背後から大型車の音が迫りくるのは恐怖。
しかししばらくして、路肩現る!
これでもう安心して走っていいの?
信じていいの?
しかし3本バンプ復活。
100mごとにこいつが行く手を阻む。
意地でも快適には走らせまいとするこの謎の嫌がらせは何だろう?
でも今はまあいい、大目に見てやろう。
地獄は終わった。
鼻歌まじりで景色を楽しむ余裕も出てきた。
時々、カピバラの死体がある。
カラフルな小鳥がいるが、すばしっこくてなかなかうまく撮れない。
GSに併設されている宿で。
2400ペソ(1029円)。
前日のホテルインペリアルより安いが、ここはまともだ。
この日は日曜日で、街に泊まったとしてもスーパーが営業していない。
GSに併設されている店は日曜日でも営業しており、ちょっとした食料と飲み物などが買える。
日に日に気温が下がり、朝は10℃以下、日中でも15℃に届かないほど。
だいぶすごしやすくなってきたのでキャンプもしてみたいのだが、あまりの宿の安さに戦意喪失してしまう。
この近くに、アルゼンチンとブラジルとウルグアイの三国国境がある。
考えてみたら三国国境なんてそれほどめずらしくないのだが、イグアスのところだけは観光名所になっている。
物価が安いと外食もしてみたい。
街のレストランは僕の活動時間帯と合わないので利用できない。
走行中、高速沿いに現れた店に入ってみた。
そう、僕の記憶に残るアルゼンチンの典型的な食はこういうやつ。
ガチガチでバサバサの肉、ポテト、パン。
味付けは塩のみで、ソースの類はなし、パンにはバターもつかない。
ひたすら喉が渇く。
ドリンクも含めて1800ペソ(772円)。
激安を期待したのだが、だいぶ高かった。
しばらく外食はいいや。
おい、またかよ。
ダメだなー、アルゼンチン。
信じた自分がバカだった。
せめて大型車が左車線を走ってくれればだいぶマシなのだが、左は追い越し車線なので大型車は右を走る。
背後から大型車が迫りくる音というのは実に心臓に悪い。
雨のため、小さな街で連泊。
物価は本当にウソみたいに安い。
鶏モモ548gが189ペソ(81円)。
牛肉580gが521ペソ(223円)。
これは贅沢。
先日の道端ステーキには遠く及ばないが、まあまあうまく焼けた。
臭味があるが、それがまたワイルドでいい。
野菜も安い。
大サイズのパプリカが2個で134ペソ(57円)。
パプリカが1個100円以下で買える国はあまりない。
うさんくさめの米、1kg231ペソ(99円)。
うさんくさいけど、これが意外においしい。
プリン、70ペソ(30円)。
チョコチップクッキー、120ペソ(51円)。
コカコーラは1.5Lが275ペソ(117円)。
買える値段だが、他のソフトドリンクはもっと安い。
雨の日はぐーたらして体を休める。
でも、アルゼンチンの宿はWi-Fiもスローで途切れ途切れ。
今どき途上国でもWi-Fiはそれなりにまともになったと思っていたが、まだまだこういう国もある。
その後、高速は路肩未舗装になったり舗装になったりの繰り返し。
車道の路面もひどかったりする。
これは舗装? 未舗装?
荒れてるなー。
「マルビナスはアルゼンチン」
マルビナスとはフォークランド諸島のこと。
アルゼンチン南端近くの大西洋にあり、イギリス領でイギリスが実効支配しているが、アルゼンチンは自国の領土と主張している。
1982年、アルゼンチンはフォークランドに軍事侵攻してイギリスと戦争になった。
戦争に勝てば国民からの支持も得られ、かつ経済も回復するはずと見込んでの侵攻であったが、鉄の女サッチャーに返り討ちにされ、敗戦。
アルゼンチン政府は戦争に勝利したと報道、しかし当時ワールドカップで遠征していたサッカー選手たちによって真実が暴露された。
これによって国民の怒りが爆発、政府の思惑ははずれたどころか、アルゼンチンはさらなる大混乱の極みへと向かっていった。
国民の不満をそらすために仮想敵国をでっちあげる、という手法は古典的な常套手段。
現在も世界各地にある領土紛争、陸続きだとより直接的に衝突するリスクが高いが、こういう人が住んでるのかもよくわからない離島は、権力者にとって国民のナショナリズムを簡単に引き出せるカードとして利用しやすいのだろう。
この街は、マップに数軒のホステルが記載されている。
良さげなところから行ってみたのだが、ベルを鳴らしても応答がない。
2軒目も応答なし、3軒目も応答なし。
ダメだこの国、経済が死んでる。
次はどこへ行くかと模索していたら、目の前の家の女の子が声をかけてきた。
どう見ても宿泊施設ではないふつうの民家のようだが、「セニョール、部屋あるわよ」と言う。
この家のお母さんが出てきて、1泊1500ペソ(648円)で泊まらせてもらうことになった。
女の子2人でその場で部屋を掃除してベッドを整えて、即席宿が完成。
結果、ホステルより安いであろう値段で、個室を確保できた。
いやー、ラッキー。
なんだかジンバブエを思い出した。
大統領の失策で経済が崩壊した国だが、人々は驚くほど紳士的で親切にしてくれた。
アルゼンチンも似ていて、政府の失策によって荒んでしまった国でも、人はいつもやさしく笑顔を見せてくれる。
Gualeguaychú, Argentina
5046km (Total 14170km)