アシスブラシル→リオブランコ (Brazil)

ブラジル再び。

ブラジルの国土は世界5位、中国よりは小さいがオーストラリアより大きい。
先にサンパウロ、リオデジャネイロ、南パンタナール、イグアスなど南部を2ヶ月ほどかけて走ったが、それは広大な国土のほんのごく一部。
これから西部アマゾンを走る。

国境の街アシスブラシルは小さく栄えているわけではないが、ペルーの街とはやはり確実に違う。

スーパーがある。
カード払いができる。
クラクションが鳴らない。
多人種。
主に白人、黒人、混血で、アジア系は見ない。

ATMはあるが、どういうわけか何度やっても引き出せない。
こんな辺境の街でもカード払いできるので問題ないが、まったく現金を所持しないままというのも不安ではある。

通信会社がない。
ブラジルでSIMを買うには正規店舗でパスポートを提示して登録する必要があり、そういった店はここから340kmほどの大きな街まで行かないとない。

レストランも屋台も少ない。
ブラジルでは外食する気になれないので自炊でいいのだが、南部と違ってスーパーの品ぞろえは乏しく、誠に残念ながら日系食品はほぼ売ってない。
ペルーとボリビアで毎日のように通ったCHIFAともおさらば。

宿は60レアル(1482円)。

エアコン!
これまたペルーとの国力の差を見せつけてくれる。
Wi-Fiはもちろん。
ただしシャワーは水のみ。

久々のガラナ。

ヤキソバを買ってみた。

なんとこれ、粉末ソースも液体ソースも入っておらず、麺のみだった。
ちょっとでも期待した自分がバカだった。

日清の袋ラーメンも売っているが、それはちゃんと粉末が入っている。
もちろん日本で売ってるインスタントラーメンと比較できるようなレベルではないが、他の食品よりはマシなのでたまに食べる。

雨、雨、雨。

長いこと長いこと、よく降るもんだ。
7~8月が最も降雨量の少ない乾季で、降雨量の減少が始まるのは5月ぐらいから。
やはりまだ早かったか。
2泊だけのつもりだったが、3泊に延長。

人種民族としては明白にブラジル人だが、ここの人々はペルーの農村に引き続き、無表情、無愛想、不親切。
宿でも店でも、こちらがあいさつしたりお礼を言ったりしてもノーリアクション。
やりとりは最小限の言葉で、なんなら無言ですまそうとする。
暗鬱として、まるで生気がない。

「ラテン系」というと陽気で情熱的なイメージが湧く人が多いかもしれない。
人はシンプルなひとつのイメージを持ちたがるものだが、現実はそんなものではない。
人種民族よりも、狭い土地での定住農村社会という地理的特性が大きく影響している気がする。

路面はペルーの方がはるかに良かった。

いつ舗装されたかというタイミングの違いだけかもしれない。
でもヘタな先進国より、貧困国の方が大国からの多大なる援助で立派な道路が敷かれている、という逆転現象は今までもあちこちで見てきた。
ペルーやボリビアの舗装道路が自前なのか援助なのかは確認しなかったので不明。

アップダウンは引き続き。

アップとダウンのみで、フラットはない。
ブラジル南部も大半がそうだった。
でもここは勾配は今のところ緩やかで、降りずにこいで登りきれることが多い。

ずっとジャングル走行と思いきや、ファームじゃないか。

大農場主による広大な牧草地。
もしかして、またもやえんえんファームの風景?
雨にも負けず猛暑にも負けずアップダウンにも負けず進む気になれたのは、アマゾンの大自然を楽しむためだったのに。

この半世紀でアマゾン熱帯雨林の20%が消失し、現在も減少中。
伐採された土地の70%が牧畜業として利用される。
地球の人口はまだ増加中なのだから、これを阻止するのは難しいだろう。

クラクションは鳴らない。
さすが、これぞ文明国。
クラクションを鳴らさないことが、原始猿から文明人への尊厳ある第一歩であり、絶対条件である。

イヌの襲撃は、1日1回程度。
吠えられることは多いが、敷地から出ないようにちゃんと躾けられている。
これも文明国の証。
もう棒はいらない。

ブラシレイアという街で1泊。

ようやく現金を引き出せた。
ATM自体はまああるのだが、VISAやMasterのマークが付いたものはごく一部で、他は国内向けっぽい。

ブラジルって、国民全員に割り当てられた納税者番号(CPF)でガッツリ管理されてたり、唯一のポルトガル語国家ということもあってか他のラテンアメリカ諸国とは一線を画しており、内向きで右寄りな印象。

目星を付けてた安宿に向かおうとしたら、水没してるじゃないか。

宿は他にもあるし、相場もそんな高くなさそうなので、多少高めでも不快な思いをせずにすみそうな宿をあたってみよう。

たどり着いた宿のレセプションの女性は、生きてて楽しいことなんか何にもありゃしないわと言わんばかりにブサっとしており、陰鬱そのもの。
接客業には最も向かないタイプとお見受けしたが、この地方はこんな人ばっかりだ。

あいさつしても無視、目を合わせようともせず、僕の問いかけに対してはわずかにアゴを縦に動かすか横に振るだけ、という徹底した省エネ。
僕がポルトガル語をちゃんとしゃべれたらちょっとはマシなやりとりができるのだろうけど、こういう土地では自国語が通じないよそ者に対して一片の情け容赦もない。
こちらから必死に食らいついて意志の疎通を試みないと、ちょっとでも油断すると言葉が通じない異常者とみなされて、放置され相手にしてくれなくなる。

夜、週末だからなのか、近隣から爆音のカラオケが轟いてきた。
全員躁鬱病みたいなこんな土地の人たちでもカラオケやるんだ。

翌日。
増水してるなー。

高床式の家が多いから大丈夫かなとも思ったが、ダメっぽいな。


この後まもなくして、また降り出した。
いちいち足止めされてたら進まないので、雨天でも走行。
あまりに激しく降ると、雨が目に当たって何も見えなくなるし、道路が川のようになって見えない穴に落ち込む危険性が高まるので、少し弱まるまでは待つ。
しかしよく降る、そりゃ洪水にもなるわ。

丸一日雨天走行して、小さな街で1泊。
カード払いは不可、PIXというブラジル特有のQRコード決済なら可。
もちろん外国人旅行者にはそんな芸当はできないので、現金払い。
前日に引き出せておいてよかった、やはり現金はまだまだ必要だ。

毎度のことだが、いちいち言葉の壁が大きく立ちはだかる。
ポルトガル語はスペイン語と近いので、はっきり言ってこちらがスペイン語で話せばほぼ通じるのだが、かれらが何を言っているのかがさっぱりわからない。

言語的閉鎖性。
言葉の壁は、ちょっとした工夫やジェスチャー、今だったら翻訳アプリを駆使するなど、お互いが歩み寄れば難なくクリアできる場合が多い。
しかしここでは、自国言語が通じない人間と対峙するのは生まれて初めてなのか、世の中には自国言語が通じない人間が存在するという現実が受け入れられないのか、頑なに自国言語だけで押し通そうとしてくるので、単純なやりとりでもおそろしく労力を要する。
ポルトガル語はわからないと言ってるのにポルトガル語をベラベラとしゃべられても、同じ言い回しを執拗に繰り返されても、わからんもんはわからんのだよ。
こちらはあの手この手であらゆる手法で伝達を試みているのだから、相手も伝え方を変えてもらわないことにはどうにもならん。
生まれてから死ぬまで100%自国言語だけ、英語なんて一語たりとも知らないし外国人と接することもないから不要、ガッツリ閉じた社会。

人間性もとても冷たい。
商売っ気が皆無のようで、言葉が通じない人に売るサービスはないのでどうぞ消えてください、といった態度をとられる。
競争原理もあまり作用してなさそうに見えるし、向上心を持って良い仕事をしたところで一文の得にもなりゃしないのだからボーッとすごしていた方がいい、そんなブラジルに社会主義性を感じるようになった。

夜、また爆音カラオケ。

デカッッッ!!!

White Witch Moth。
「白い魔女」という名の世界一羽の長い蛾。
和名はナンベイオオヤガ。
羽の面積だと沖縄にも生息するヨナグニサンの方が大きいらしい。

これは黒い魔女かな、これも大きいけど白の後だとだいぶ小さく見えてしまう。

子ワニかな。

行けども行けどもアップダウン。

ブラジル最高峰は3000mほど、特に高峰ってほどでもないし、大山脈もない。
ただ全体としてこんなシワシワな地形なのかな。








小さな街のGSに併設されている宿で1泊。
庭にヤシの木や各種フルーツが成っている。

めずらしく、というか初めてか、女性が親切にもてなしてくれた。

もぎ取ったココナッツをぶった切り。

ジュースを飲み干し、中の実をほじくる。

僕が日本人だと知って、たいそう驚いていた。
たまたまこのお姉さんが例外的にフレンドリーなのか、それとも土地柄が変わってきたのだろうか。
お別れの際、「ナマステ」と言われた。
いや、ナマステじゃないが。

この日は気持ち安らかにすごせた。
しかしその後、やはりたまたまこのお姉さんが例外的だっただけということを思い知ることになる。
現実はそんな生易しくない。


リオブランコという大きな街。

ここも氾濫。




久々のWARMSHOWERS。
ホストに承諾をもらい、メッセージでやりとりしていた。
しかしなんだかやる気なさそうな、いいかげんな感じで、住所もわかりやすく正確に教えてくれず、嫌な予感。
それでも苦労してたどり着いたのだが、ブザーを鳴らしても誰も出ない。
そもそもここで合ってるのかどうかも確認できない。
SIMをまだ買ってないので連絡のとりようもない。
結局、会えずじまい。
また街の中心に戻って、宿に泊まるしかなかった。

橋に引っかかった流木を撤去している。





日没直前に投宿。
宿もまたひどい。

ここもカードは使えず、PIXまたは現金。
僕が外国人旅行者だとわかっていながら、PIXのQRコードを無言で指さすだけの意地悪な婆。

毎度毎度、Wi-Fiパスワードを紙に手書きで、しかも筆記体で書いて渡される。
ただでさえ外国人の書く文字は解読が難しく、大文字小文字も合ってなかったりで、接続できるまで何度も試すことになるというのに、まして筆記体なんて勘弁してくれ。
相手にわかりやすく伝えるということをまったくしてくれないんだな。

はるか遠い一番端っこの部屋。
Wi-Fiが風前の灯のようで、1分に1回は途切れる。
エアコンなし、扇風機。
冷蔵庫があるのが唯一のメリット。

シャワーを浴びようとしたら、水が出なくなった。
外は大雨、なんでこんな水であふれ返ってるところで断水するのか。
水道の仕組み、断水の仕組み、というのが僕のイメージとズレがあるようだ。

レセプションに行き、「Wi-Fiもクソだし水も出ないから部屋を変えてくれ」と苦情を言った。
すると、「Wi-Fiも水道も10分後には復活するからまあ待てよ」とヘラつくばかり。
こいつは何を根拠に10分後なんて言うのか。
Wi-Fiと水道は直接関係ないのに、なぜ同じタイミングで10分後に直ると言い切れるのか。

当然、10分たっても20分たっても何も変わらず。
まあ信じてもいなかったけど、どうしてウソつくのかな。
いっそ別の宿に移動してやろうかとも思ったが、外は暗闇で大雨、動くのは賢明ではない。
それに、どうせ周辺の宿も似たようなクオリティだろう。
3時間後、22時をまわってようやく水が出て、シャワーを浴びれた。

海外ではこういったことはめずらしくはないし、従業員の対応もあんなもんだ。
でも気持ちに余裕がない時はこれぐらいのことでもイライラっとしてしまう。

翌日。

SIMを買いにClaroへ。
何をするにもCPFで管理されているブラジルでは、SIM購入にも当然CPFが求められる。
でも近年は外国人はパスポートの提示だけですむようになっている。

カウンターでパスポートを提示した後、登録手続きにやけに時間がかかる。
何をそんな苦戦することがあるのか、30分以上は待たされ、ようやくSIMを渡され、会計。
しかし会計もまたおそろしく時間がかかり、トータルで1時間が経過。

ついにこれで完了と思いきや、なんとここでシステムダウン・・・
ウソでしょ?

「今日はもうムリだ、24時間後に薬局に行って支払え」
・・・は?
人を1時間も待たせておいて、最後の最後でできませんとはお粗末にも程がある、コントにもならん。
インターネットを提供する会社が簡単にシステムダウンしてどうすんだバカ。
しかもClaroの店舗じゃなくて薬局で支払えってどういうことだよ。
いずれにしても明日の朝にはこの街を出る、そんなことしてられん。
結局、買えずじまい。

Claroには見切りをつけて、次にvivoへ。
ここではあっさり、パスポートだけでは買えないと言われた。
今回の旅の始めにブラジルで、vivoでパスポートだけでSIMを買えたんだけどな。
「あっちにバスターミナルがあるから、そこで買えるわよ」と言われたが、もういい、そういう雑なたらい回しが一番嫌いだ。
だいたい、正規店舗でダメなのにどうしてバスターミナルで買えるんだよ。
「10分後」だとか「あっち」だとか、そういうのもうウンザリです。

一番やっちゃいけないことは、他人に期待すること。
常に最悪を想定し、どう裏切られても動じない心構え。
こういう土地では困った時に誰も助けてくれない、自分ひとりで解決するしかない。
旅はずっと続けていたいけど、それには気を強く持ち続けなければならない。

広大な領土、人口大国、閉鎖社会、管理社会。
こうして見るとブラジルは中国とそっくりだな。
一度免除となったビザ制度を復活させる国なんてなかなか聞いたことがない。
ボルソナロが異端だっただけで、元来この国はオープンになることに抵抗があるのか。
せっかく全国民をCPFで管理しているというのに、それを持たない外国人にあまり気軽に来られても嫌やわ、ってところか。

その後、自転車屋へ。
クスコで買ったタイヤは、やはり日常的にパンクする。
シュワルベ以外のタイヤなんて、こんなもんだ。

パンク防止テープというのを買ってみた。

46レアル(1136円)。
これをタイヤ内部に仕込めば、異物が刺さってもチューブまで到達しない。
シュワルベは最初から内部が耐パンク素材となっているが、他のタイヤはペラペラなので。
実際乗ってみないことには効果はわからないが、毎日パンクするストレスから早く解放されたい。
この街の宿にたどり着いた時なんて、前後両方ともパンクしてた。

自転車が元気でいてくれれば、進み続けられる。
ここに長居したくない、とっとと去ろう。


Rio Branco, Brazil

15012km (Total 151706km)



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