下関→大分

九州。

関門トンネルから出ると、おじさんから声をかけられた。
ここを通るサイクリストをつかまえて、話をしたり写真を撮ったりするのが趣味のようだ。
その写真コレクションを見せてもらうと、何十人という驚くほどの多さで、知ってる顔もいくつかあった。
たしかに日本一周や縦断をするようなサイクリストなら、必ずといっていいほどここを通ることになるだろう。

差し入れも準備しているようで、栄養ありそうなものと甘いカフェオレをいただいた。

「ここでよくテントを張ってる人いるよ」と言われ、トイレもあり雨もしのげるスペースにテントを張った。

まもなくして、警察が来た。
通報が入ったようだ。
警官はいたって紳士的でフレンドリー、僕の旅にも興味を持ってくれて、しばし談話。
通報が入ったからには撤収せざるをえず、近くの公園に移動した。

国内では今まで何も言われてこなかったので、油断してしまった。
「野宿は人目につかない場所で」という大原則を忘れてはいけない。

翌日。

ハブがもう限界。
先日神戸で応急処置してもらったリアハブ、もう不具合が出てきた。

本来、ハブが回転してもスプロケットは静止を保つ構造になっているのだが、スプロケットも一緒に回転するようになり、それと連動してクランクも同スピードでクルクル回転するようになった。
その不具合でチェーンがスプロケットに変に絡みつき、そこでペダルに力をこめたら、チェーンが切れてしまった。
チェーン切れなんて超久しぶりすぎて修復に手間取ってしまったが、なんとかつなげた。
コネクター持っといてよかった。

こんなトラブルが繰り返されたらたまらない。
もう応急処置ではなく、交換しかない。

ということで、直感で探し出した店。

同規格のハブが在庫にあれば話は早いが、おそらくどこの店に行ってもその可能性は低い。

近年、自転車パーツの規格の乱立、変化が目まぐるしすぎる。
パーツ交換しようとすると、たった数年でも今はもう同規格のものが現行品で入手できない、なんてことが多い。
時代の流行は軽量化だそうで、僕のようにツーリングで強度や耐久性を求める規格は廃れていく。

どういう判断をされるのか、固唾をのんで見守る。

なんと、店主さんの私物のハブを取り付ける、という離れ業をやってのけてくれた。

クイックレバーではなくレンチで締める固定棒は初めて。

ディスクブレーキのローターも今までのとは合わず、店にあったものを取り付けてくれた。

ハブのサイズが変わると、スポークの長さも変わる。
しかし編み方を変えることで、奇跡的に同じスポークで組むことができた。

お見事。

スプロケットもキレイにしてくれた。

4時間におよぶ作業。
こんな厄介な依頼を快く引き受けてくれて、大手の店ではありえない臨機応変さ、そして作業中は店主さんと楽しくお話もできた。

困った時こそこんな出会いがある、自転車の旅。

無事、走行再開。
しかし今後は、ますますパーツ交換が難しくなっていくな。

この日はもうたいした距離を進めず、快活泊。
ナイトパック12時間で2310円、安い。
快活があるような街であれば、いよいよホテルというものがいらなくなってくる。



別府。

こんなだだっ広い歩道、贅沢。

九州に入ってから、自転車レーンが少ない。
車道は狭すぎて、歩道走行せざるをえない場面の方が多く、そして歩道はデコボコ&縁石地獄。

もっとも他のどの地方でも、道路の構造自体はなんら改善されていない、既成の路面にお絵描きしただけの稚拙な自転車レーンばかり。

それでも、お絵描きの自転車レーンがあるだけでも、心貧しきドライバーから嫌がらせを受けることが以前と比べると激減したので、まったく無意味というわけではない。

お隣の韓国と台湾は、最初期のインフラ基盤は日本が築いた。
にもかかわらず、今や両国とも自転車のテリトリーが確保された先進的な道路が実現されている。
どうして宗主国の方が失敗に終わってしまったのか。

盲人のための点字ブロックも、99.8%の健常者にとっては障害物でしかない。
そこに莫大なコストをかけて、一般的な乗り物である自転車にはコストをかけない、いやむしろ自転車を妨害するための障害物を設けるコストは惜しまない。
いかなる闇の力が作用しているのか、不思議な国である。

われらが、やよい軒。
今日も無限ごはん。

全国各地そこそこの街であれば、やよい軒がある可能性がけっこう高い。
1000円で腹を満たせる店なんて、今やここしかない。
毎日やよい軒でもいいってぐらい、本当に助かってます。
僕は全国でもトップクラスのやよい軒ヘビーユーザーなんじゃないかな。




愛媛県西宇和郡伊方町

4539km



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