札幌→帯広

12月31日早朝、走行開始。

夏は広々と走りやすい北海道の道路も、冬は雪によって道幅が狭まる。
車道はスムーズに走行できるが、車との距離が近すぎて危なっかしい。
歩道も除雪されてはいるが、ボコボコでまともに進めないし、歩行者とすれ違う際はいったん止まって降りる必要がある。
状況を見ながら、歩道で試してみたり、車道で試してみたり、行ったり来たり。

雪で視界が悪いにもかかわらず、多くの車は無灯だったり、スマホをいじりながら運転している人もいる。
かれらにとってはこれが日常なのだろうけど、事故車も頻繁に見かける。

バイクに乗る人はいないが、郵便配達の原付だけは例外。
あの人たちはどうしてコケずに走行できるのだろう。
常に足をおろして、うまいことバランスをとっているように見える。

札幌都市圏を抜けると、歩道消失。
いっそそうしてくれた方が、堂々と車道走行できていい。

夕張川。

今回買ったスパイクタイヤ、以前の北欧走行と同じくシュワルベのウインターシリーズの最低グレード。
サイズは26×1.75。
スタッド増設可。
タイヤのチョイスはこれで申し分ない。

ただ問題は、滑る滑らないよりは、車が巻き上げた雪が柔らかく堆積している箇所に自転車のタイヤが突っ込むと、グニャッと持って行かれて制御不能になること。
砂漠地帯、スナスナの未舗装と同じだ。

今年は特によく降る、とニュースでも報じられていた岩見沢。

岩見沢の街中では、歩道の除雪もまったく追いついておらず、これは砂漠に突っ込んで行くのに等しい。

こんな雪に埋もれた街でも、コンビニもスーパーもマックも牛丼屋もパチンコ屋もちゃんと機能していて、人々が平然とすごしているのはなんともシュールな光景。
パチンコなんかやってる場合か、と言いたくなるぐらい災害レベルの積雪。

この後、国道は渋滞。
大晦日だからか。
他の道路は除雪が不十分だから国道に集中するというのもあるかもしれない。

歩道は不可能なので車道で行く。
車道の端は柔らかい雪が堆積しているので、轍の上を走る。
交通の妨げになってしまうが、渋滞しているので僕がいようがいまいが車の進行スピードは変わらない。
それでも、少しでも迷惑にならぬよう神経を使う。
撮影する余裕などない。

しかしさすがここは日本。
この日は一日を通して、一度たりともクラクションを鳴らされることはなかった。

初日から苦戦、日が短いので活動時間帯が限られるというのもあって、この日はわずか53kmでストップ。

岩見沢の街はずれに、「イオン・温泉・道の駅」の3点セットが一箇所にまとまっており、宿泊地はここで文句なし。

イオンで食料を買ってから、温泉へ。

860円、たけえー。
僕が必要としているのはシャワーだけで、湯舟に浸かるという行為は特にいらない。
しかしあいにくここは温泉大好き民族の国、シャワーだけでいいから安くしてくれという選択肢はない。

無料で年越しそばを配布された。

大晦日だというのに、大変なにぎわい。
なんで大晦日に温泉なんか行くんだこの人たちは、家にいろよ。

道の駅は17時で閉業。
店は閉まっても建物内の通路は24時間開いており、ここにテントを張って寝る。

暖房が効いているわけではないが、外よりは格段に暖かい。
北国の道の駅では、緊急時の避難用なのか、このように開放してくれているところが多い。
ありがたいことだ。

しかし例によって、

だから、どこへ持ち帰れと?

自販機はあっても、缶もペットボトルも捨てられやしない。

ふつうのコンビニにはゴミ箱があるものだが、道の駅の敷地内にあるセブンイレブンは、やはりゴミの持ち込み厳禁と書かれていた。
ここまで憎悪の感情をこめてゴミを捨てさせまいと神経を尖らせるのは逆に疲れないかね、いっそふつうにゴミ箱を設置した方が最大多数の幸福が得られそうなものだが。

19時、テントを張った建物内の通路は自動で消灯。
道の駅はキャンプ場ではないので野営は公認されていないが、警備が巡回に来ることもないし、僕がテントを張っていることに誰も気づきすらしない。
静かに眠る。

1月1日。
明けましておめでとうございます。

-12℃。

昨日の渋滞がウソのよう。
交通量少なく、道幅広く、除雪も行き届いている。
最高だ。

スパイクが雪を咬むジャリジャリ音が心地良い。

雨天走行は、自転車も荷物も衣類もグチャグチャに汚れるのでたまらなく嫌なものだ。
でも今回のこの雪道走行は、驚くほど汚れずきれいな状態を維持できている。
サハラ砂漠走行時、強烈な砂風が自転車の汚れを吹き飛ばして、いつもよりきれいになっていたことを思い出した。
やはり雪道と砂道は等価といえる部分があるのか。

「直線道路日本一 29.2km」
こんなのあったんだ。

オーストラリアのナラボー走行を経験した者としては、直線29kmはなんともかわいいものだ。

空知川。

滝川。

北海道の出生率は、都道府県別でワースト2位(1位は東京)。
人口減少率は全国1位。
超高齢化で自宅の雪かきもできなくなったり、車の運転もできなくなる高齢者が今後も増えていくことだろう。

滝川はこじんまりとした街で、元旦に営業している店はごく限られている。
幸い、マックスバリュは営業していたので食料は買えた。

ちょっと用事ができたので、この日は古びたビジネスホテルで1泊。

宿探しは、Booking.comをはじめとするネット検索が普及して久しいが、こういったサイトに出てこない電話予約のみの宿が日本にはまだ多い。
電話が苦手であらゆるやりとりを文字送信ですませたい現代っ子の僕だが、この日は渋々ビジネスホテルに電話して予約。
有名観光地だったら年末年始は満室だろうが、幸いここはガラ空きだった。

駐車場には、僕の自転車と1台のバイク。
バイクも雪道ツーリングできるんだな。

ここも、雪に埋もれた街。

歩道は通行不能。
各建物の出入口前だけ除雪されている。

山道へ。

山道でもしっかり圧雪されており、自転車走行に何ら問題はない。
勾配も緩やかで、サクサク進める。
最高だ。

交通量はさらに減少。
静か。
サイクリングの快適度は、車の交通量と如実に相関する。

車線など見えるはずもないので、「これ以上端に寄ったらダメ」という目印が上に設置されている。

空知川。


サイクリストは皆無だが、ライダーとは1日数回すれ違う。
皆、必ず手を振ってくれる。
無言だが、これは単なるあいさつではなく、互いにエールを送り合っているのだ。


富良野。
スキーリゾートでもある富良野は、泊まる場所ではないようだ。
宿泊施設はあまりに高すぎ、安そうな民宿はどこも満室。
道の駅もなければネットカフェもない。
スーパーも正月休みで営業しておらず、利用できるのはコンビニだけ。
やっぱ滝川ぐらいの地味な街がちょうど良かったな。

何の目星もつけられないまま、進み続ける。
日没が迫る。

除雪されているのは、道路と私有地だけ。
森や河原や公園にテントを張ろうったって、雪に埋もれて立ち入ることもできやしない。

ようやく現れた、立派なトイレ付きのパーキング。

やはりある程度の間隔で公衆トイレというのは必要のようだ。
その辺の公園のトイレなんかは水道が凍結してしまうので閉鎖されているが、こういうところのトイレは24時間暖房が効いて水道も使える。
助かるわ。

トイレ小屋の裏にこっそり設営。

キャンプするにも、何らかの屋根の下でないと、一晩でテントがつぶされるおそれがある。

今回、出発してからずっと無風。
暴雪だけでなく暴風も覚悟していたのだが、風がないというだけで難易度がぐっと下がる。

正月休みでスーパーが営業していないため、食料はすべてコンビニで調達。

朝。
-14℃。

寒くはない。
着込んでいるからというのもあるし、札幌である程度氷点下生活をしていたので慣れたというのもある。
暑さには適応できなくとも寒さなら慣れる、というのは僕個人の特性か。

万遍なく雪に覆われた土地では、ろくに休憩もできない。
そんな時、ダイソーで買ったアウトドアチェアが大活躍。
こんな小っこくても座り心地良く、快適に休まる。

やっかいなのは、寒さよりも、雪道よりも、水が凍ってしまうこと。
保冷バッグに入れておけばなんとか大丈夫だが、うっかり外に出しっぱなしにしておくと完全凍結してしまう。
こうなるともう容易に解凍なんてできないし、ゴミ箱がないので捨てることもできない。
もはやただのおもりと化す。

視界の悪い雪道では、ライトも重要。
ライトはヘルメットに装着すると勝手が良い。
以前キャンプで使用していたヘッドランプ、本体よりも先にゴムバンドが伸び切ってダメになってしまうものなので、ゴムバンドを捨ててヘッドランプ本体をヘルメットにくっつけて活かしている。

サイクリストにとっては、ライトは前方より後方が重要。
これらも元々は自転車に装着する用のものだが、創意工夫でなんとかヘルメットにくっつけている。

順調。

いつだってそう。
「楽しめそう」という僕の直感はいつだって当たる。

「冬の北海道を走ってみたい」
そのために半年間、札幌で仕事しながら冬を待っていた。

南富良野。

富良野よりも南富良野の方がこじんまりしているし、ツーリスティックしてないのですごしやすい。
道の駅もあるし、スーパーも営業している。

道の駅にはモンベルも入っている。

フードコートの多くの店舗は閉業中だが、なんとかラーメン豚丼セットにありつけた。

にぎやかな道の駅を出ると、すぐまた静寂の雪景色。

時々、わざわざ車の窓を開けて「ガンバレー!」と叫んでくれるドライバーもいる。
ありがとう、声をかけてくれるだけで元気をもらえます。

狩勝峠(標高644m)。

峠には人っ子一人いやしないが、トイレはちゃんと暖房がついている。
解凍。

山を越え、十勝平野を臨む。

ブレーキはやはりディスクに限る。
雪道の下りでも、なんら性能は落ちない。

しばらく下降すると、またトイレ付きのパーキング。

どうやらこれがキャンプ地の定番となりそうだ。

今回、計5つのモバイルバッテリーを用意した。
周知のように、バッテリー、電子機器は低温に弱い。
スマホは電源を落としておき、常時ポケットに入れて体温で温めておいて、必要な時だけ電源を入れて、用が済んだらすみやかに切る。

モバイルバッテリーで充電する際も、低温だと調子悪い。
なのでバッテリーと電子機器をシュラフに入れて一緒に寝て、朝起きて温まった状態で充電してやるといい。

走行中にハブダイナモによる充電もおこなっているが、それだけではとても間に合わない。

道東へ。
みるみる雪が減っていく。



北海道帯広市

278km



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