マナウス 1 (Brazil)
アマゾンのど真ん中、人口200万人の大都市マナウス。
アマゾン川はアンデスを源流として南米大陸を東へと突っ切っているが、そのふもとから大西洋に流れ込むまで高低差がわずか100mほどしかない、大平原地帯となっている。
しかし依然として道はアップダウン、マナウスの街中も坂だらけ。
安宿が集まるエリアに行ってみたのだが、定番のホステルでドミトリーなんと73レアル(1983円)。
一気に物価上昇か。
ホステルのWi-Fiを借りて安宿を検索、予約サイト上で最安の宿に決めたが、中心地からは12kmもある。
まあ仕方ない、少々長居することになるかもしれないので、遠くても安い方がいい。
炎天下、アップダウンを繰り返して、宿に到着。
ホテルという感じではなく一般的な家屋、Airbnbに近いかな。
個室で50レアル(1358円)。
トイレ・シャワーは共用。
キッチンあり。
立地が不便というだけで、あとはパーフェクト。
客は僕1人だけ。
スタッフはキューバ人。
ブラジル人とは明らかに気質が違う。
キューバ人が誠実なのはよく知っているし、スペイン語でやりとりできるので楽。
自転車で市街中心へ行き、懲りずにまたSIMを買いにvivoへ。
同じvivoでも、CPFなしで買える店舗とそうでない店舗があるらしい。
CPFなしで買える店舗はどこだと聞くと、また指をさして「あっちあっち」と言う。
出たー!
だからもう、それ禁止!
適当な方向を指さして「あっちあっち」と言われてわかる人間は存在しねえから。
地元民じゃないんだから、勝手のわからぬよそ者をほんの少しでもいいから配慮してくれ。
しつこく食らいつき、言葉の説明ではなくマップ上でどこなのかを確定させる。
彼女たちも雑なだけでウソをついてるわけではなく、言われた場所に行くと、たしかにCPFなしで買える店舗にたどり着いた。
待ち時間は長かったが、自分の番が来てパスポートを提示してからは、手続きにそれほど時間はかからなかった。
しかしその後がまた大変だった。
いつものことながら、ポルトガル語がわからないから翻訳アプリを使って伝えているのに、どうしてポルトガル語でベラベラとしゃべり続けるのだ、わかるわけなかろう。
どうやらまた、「薬局に行って支払え」と言ってるらしい。
これがよくわからん。
店舗で今この場で支払えばすむ話、それがダメならオンラインでの支払いでもいい、なんで薬局に行って支払うとかわざわざ手数を増やす?
その薬局はどこにあるんだよと聞くと、またしても指をさして「あっちあっち」。
だーーかーーらーー、それもうやめろ!!!
店を出て薬局まで行き、25レアル(679円)払ってチャージ完了(金額は選べる)。
しかしなんとなく予感はあったのだが、チャージしてもネットにつながらない。
アクセスポイント名が入力されてないからだ。
また店舗に戻る。
店員たちは終始、だるそうでめんどくさそうでふてぶてしく偉そうな態度。
「アクセスポイント名を入力してくれ」と言ってるのに、なんだかよくわかってなさそうで「何? 薬局に行ってチャージしないとつながらないわよ」などとほざき、僕のスマホを見てまるで見当違いなところばかりをいじくりまわす。
アクセスポイント名だ、って素人でも一目瞭然なのに、ほんとにプロかよこいつら。
この間、店員同士でおしゃべりしてヘラついたり、後から来た客の対応を始めたりもする。
そして不意に思いついたかのように僕に何か質問してくる、だからポルトガル語は通じねえ、って何度言えばわかるんだ。
ゴチャゴチャやってねえでとっととアクセスポイント名を入力すれば終わるんだよ。
ほんっとイライラさせるやつらだな。
長いこと長いこと待たされ、店員が戻ってきて「ほらよ」と煩わしそうにスマホを渡してきて、ようやくネットがつながったことを確認できた。
客に対して謝罪もなければ礼もない、僕も当然こんな畜生どもには礼など言わない、ツバでも吐いてやりたいぐらいだ。
無礼者でも仕事をまっとうにこなしてくれるのならまだ許せるが、無礼アンド無能とか、僕の目にはこいつらは動物園から逃げてきたサルにしか見えなかった。
日本でつまらんことで店員にキレるおっさんとかよくいるけど、そういう人がこういう土地に来たら怒り狂って憤死しちゃうんじゃないかな。
あー、しかし長い戦いだった。
SIM難易度世界一、ブラジル。
2023年にもなって、ただネットにつなぐ、それだけでこんなにも手間取らせるとは。
ルールやシステムの非効率性だけでなく、あまりに理解力のない無能店員との格闘。
この一連のドタバタ劇の中に、ブラジルという国の堅固な閉鎖性が象徴的にギュッと凝縮されている気がする。
翌日、歯医者へ。
日系歯医者さんとあらかじめ連絡をとり、予約していた。
こんな立派なビルの中。
日系二世の女医さんで、生まれも育ちもブラジル。
日本に住んでいたこともあり、御茶ノ水の医科歯科大学に2年ほど通っていたそうだ。
御茶ノ水といえば、2015年あたりから僕の日本での拠点地で、今回の旅を始める前も御茶ノ水に住んでいた。
出身地ではないにしても、地元感はある。
助手の女性は日系人ではないが、日本語の単語をいくつか知っているようで、「アサジサン、ドウゾ」と丁寧に案内してくれる。
前日に奮闘したvivoとはまるで別世界、ここでは人として互いをリスペクトする関係を築ける。
まずは、取れた差歯をリカバリーしてもらった。
前歯がないという喪失感は大きかった、これだけでもまずは一安心。
奥の虫歯は、だいぶ進行して神経まで達しているようだ。
まあ、半年ぐらい前から夜眠れないぐらい痛い時もあってやべえかなって思ってたからね。
初日の治療費は250レアル(6796円)。
翌日。
神経を取る治療。
この日は日系三世の男性が担当してくれた。
治療費は310レアル(8428円)。
治療後、先生にジャパニーズレストランに連れて行ってもらった。
スシ専門店が多い中、この店は定食やカレーなどもある。
ふつうの魚フライ定食と見せかけて、このフライは実はピラルクー。
もちろんピラルクーなんて食べるの初めて。
しっかりとした歯ごたえの白身魚でおいしい。
米と味噌汁はもちろん、漬物や豆腐やゴボウなどの小鉢も各種あってうれしい。
麻酔がまだ少し効いている状態での食事だったが、それでも日本食を食べられるのはこの上ない僥倖。
先生は、現役のトライアスロン選手。
ブラジル国内の大会で優勝し、今度フィンランドでの大会に出場するそうだ。
メルカドでぶら下がっているピラルクーの干物。
体長3m以上、世界最大の淡水魚。
1億年もその姿を変えていないという古代魚。
魚市場でもひときわ目を引く存在感。
あまりにも場所をとるためか、巻かれて売られるピラルクー。
他にも多様なアマゾンの魚たちが並ぶ。
Manaus, Brazil
15807km (Total 152501km)