ファームステイ 1 (Brazil)
海岸から離れて内陸へ。
再びサンパウロ州へ戻り、標高800mほどまで上がる。
天気が崩れてきた。
この季節に雨が続くのはめずらしいようだ。
雨天走行は嫌だし、とにかく洗濯物が乾かない。
毎日濡れた服に着替えて、着ながら乾かすしかない。
山道を登っていると、時々車が停まって「乗って行くか?」と声をかけられる。
親切心はとてもありがたいが、丁重にお断りする。
フルーツをどっさりいただくことも。
これはもちろんありがたくいただく。
海岸を離れると風景が一変し、ファームが連なる。
ブラジルで初めてのWARMSHOWERS泊。
ご存知ない方のために。
WARMSHOWERSは、サイクリストのための民泊コミュニティ。
アメリカ発祥で、世界中に登録者がいる。
マップ上に登録者が表示され、プロフィールを見てメッセージを送る。
承諾をもらえたら宿泊させてもらえたり、あるいは情報交換等としても利用できる。
金銭のやり取りはなく、サイクリストとしての信頼とホスピタリティのみで成立している。
キャンプすることが多いサイクリストに温かいシャワー(Warm Shower)を提供しますよ、というコンセプト。
今回のホストはファーマー。
自転車でポルトガルからベトナムまで旅をしたことがあるという夫婦。
果物に野菜にニワトリ。
ひとつひとつの規模は小さいが、何でもそろっている。
旦那さんのダグラス。
初対面なのにまるで昔からの親友であるかのように自然に僕を迎え入れてくれる。
歩きながら果物や野菜をもぎ取り、サトウキビまでも刈り取る。
向こうの山までこの家の敷地だなんて、うらやましすぎる。
近隣のファームの表札の多くが、日本人の名前であることに驚く。
ここのお隣さんも日本人らしい。
母屋には両親が住んでおり、僕は若夫婦の住む離れに泊まらせてもらう。
言葉の障壁が高いブラジルだが、ここでのコミュニケーションは英語でやらせてもらう。
離れはもともと小さな教会だったそうだ。
サトウキビをかじった後、コーヒーの豆を挽く。
プチトマトも畑で採れたもの。
今もぎ取ったライムを絞ってジュースに。
畑でもぎ取ったものがそのまま食事になる、すばらしい。
キャッサバは熱帯地方で広く栽培されているが原産はブラジルで、ここではマンジョーカと呼ばれる。
調理方法はさまざまで、頻繁に食事に出てくる。
日本でタピオカといえばジュースかもしれないが、ここではタピオカといえばクレープ。
タピオカの原料はやはりマンジョーカで、粉末にしたものをクレープ状にして焼く。
トマトソース味のものをはさんでピザっぽくしたり、ピーナッツバターやハチミツをはさんでスイーツにしたりもする。
アサイー。
アサイーもやはりブラジル原産で、ヤシに似た木に成る小さな果実からつくられる。
非常に栄養価が高く、スーパーフルーツと呼ばれることもある。
ジュースやスムージーにされることが多いが、これはアイスで、あんこのような食感。
奥さんのダニエリは街へ仕事に出かけ、食事は毎食ダグラスがつくってくれる。
醤油を使って和食まで。
緑茶に砂糖とハチミツ。
ポルトガル語で「お茶」は「chá(シャ)」。
ブラジルで食を楽しむのはほぼあきらめていたのだが、偏見がみごとに覆され、ここでは何もかもがおいしくて、幸せだ。
やっぱり都市生活よりもこういう生活に憧れるな。
僕も旅を終える日が来たらこんな生活をしてみたい。
São Paulo, Brazil
1319km (Total 138013km)